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JSME 市民フォーラム『原発問題』に参加して

 9月1日(土)、早稲田大学で日本機械学会、動力エネルギー部門主催の市民フォーラムが開催された。 タイトルは、「東日本大震災を契機として我が国のエネルギーインフラの諸問題を考える」。 以前は野球場だったという新しい国際会議場の井深大(いぶか・まさる)記念ホールにて行われた。

 井深大さんといえば、学生時代にその講演を拝聴したことがある。 ソニー創業期に盛田昭夫さんとの苦労話をされ、当時の学生たちに喝を入れられていた。 『テープレコーダー用テープの表面に磁気溶剤を塗布するのにいろいろ試した結果、 狸の毛が一番』との結論に達したくだりは今でも忘れられない。貴重な経験だったと思う。

 さて、今回の講演会プログラムは以下の通り、
  1. 原子力発電プラント震災被害とその後の対応/岡本孝司(東京大学)
  2. 火力発電とエネルギープラントにおける震災被害とその影響/浅野等(神戸大学)
  3. 電力安定供給に向けた課題と対策/中垣隆雄(早稲田大学)
  4. パネルディスカッション「今後の我が国のエネルギーインフラのあり方を考える」
    オーガナイザー/刑部真弘(東京海洋大学)
    講演の3名に加えて、小泉安郎(信州大学), 小澤守(関西大学), 阿部豊(筑波大学), 大川富雄(電気通信大学)

【趣旨】2011 年3 月11 日に発生した東日本大震災によって関東, 東北地方の太平洋沿岸部の大型発電所は甚大な被害を受けた. 1 年が経過した現在も,電力不足,節電が話題であり,日本のエネルギー政策は混迷していると言わざるを得ない. 震災時およびその後の状況を正確に市民の方々に広く伝え,今後の我が国のエネルギーインフラを考える.

 しかし参加費無料だったにかかわらず、300名は入る会場には 100名ほどしか集まっていなかった。 アナウンスを受けて、すかざず申し込んだ私は少々面食らった。 世間の関心が薄れているのか、あまり積極的に宣伝しなかったのか、 まあすわり心地の良い席にゆったりすわれたのは良かったものの、せっかくの情報発信も聴く人が少ないのではがっかりだ。
 内容は、福島第一原発事故の経緯、火力やその他発電所の現状、今後期待される発電方式など。 発表者、パネリスト、さらには聴衆も機械学会の人で(私もその一人)、それも大学の先生、あるいは退官された人がほとんどだった。 しぜん、太陽光発電、波力、地熱、風力、その他もろもろの新しい方式では、基盤となる必要電力量は供給かなわず、 ほぼフル稼働に加え、旧式発電所を復旧してがんばってもらっているものまである火力発電の現状についての説明があった。 このままではいずれ無理がたたって別の事故が起こるらしい。
 福島第一原発事故の経緯については、事故調報告に吉岡メモなどで、ようやく頭の中にまとまりがついてきた。 もちろん細かいところは食い違っており、高い放射線率で立ち入りがかなわず、不明なことも多い。 今回の講演を聴いて新しく得た知見に、東海第二のことがある。防災計画の見直しにより、 7メートルの側壁を立てたので津波被害が少なくて助かったのは聞いていたが、仮に津波がもう少し高くて、 非常用海水ポンプエリアと循環水ポンプエリアが浸水していたとしても、免震重要棟のガスタービン発電機が作動して大事には至らなかったということだ。 この設備は中越沖地震を教訓として設置したものだという。
 つまり、福島第一原発で今回のような大事故になったのは、当該原発でその時々に得られた新しい知見があったにも関わらず、 安全を強化しないで、また規制当局もそれを見逃していたからということになる。


パネルの様子

 集まったのが機械学会の工学者がほとんど。市民にもオープンなイベントだったが、 原発反対を唱える人はほとんどいなかった。しかし理屈でいくら正論を繰り返しても、 今の日本の原発反対ムードは払拭できない。なぜだろう。

 今回の事故を交通事故にたとえると、信号無視、スピードオーバーをやる自動車がいて、 しかし田舎道を走っている限りは、他の車両に出会う確率がほとんどゼロだから安全だ、 と規制当局を数字と専門解析で納得させたようなものだ。 統計論と、その複雑な事故回避メカニズムが理解できない規制当局は取締りを先送りしていた。 ところがあるとき、想定していなかった障害物が突然現れて衝突、炎上、大事故となった。 その周りの住民は土地と家屋を汚染され、移住を余儀なくされた。

 私たちにとってわかりにくいのは、他では危険であるといわれて自重し、自らを正した者もいるのに、その危険を放置して事故を起こした当事者、 および危険を知りながら、それがよく理解できずに当事者に言われるまま、その無策を放置していた規制当局。それらがほとんど変わりもせずに相変わらず、 運転を続け、規制を続けようという体制だ。
  交通事故のような小事ならば、当事者は捕らえられ、見逃した規制側も厳しく処罰されることだろう。 ところが、これが普通の人では理解できない巨大システムが対象のため、 他にその運転ができるものがなくてそのままになってしまう。 また、周りにいる私たちにも納得できるような説明が、未だにきちんとなされていない。 事故から1年半経っても説明が不十分なのだが、これはこのまま行くのだろうか。

 質疑応答の段になって、次のような質問を投げてみた。
「国会事故調査報告によると、規制側にきちんと安全評価をできる人がいなかったのが問題だったが、 今後の規制に関して、機械学会からそれをきちんとやるための手助けはできないだろうか」
 帰ってきた答えは、なぜ規制当局に充分な人材がいなくなったかの言い訳だった。 そうではなくて、これから“きちん”とやるための手助けはできないか、 ひいては日本に原発の安全性を正しく評価できる人がいるのかどうか、 知りたかったのだが次の質問者にバトンを渡すしかなかった。

  地球は相変わらず自転を続け、季節は移り変わる。しかし、わだかまりを持ったままでは、 いつまで経っても民意の“原発反対”をくつがえすことはできない。 論理でいくら説得しようにも限度がある。偉い人や、原発の人に押し付けるだけでは無責任だ。 とにかく人心を鼓舞するような大騒ぎするのではなく、冷静に勉強をつづけて理解を深めたい。 まずは、9月15日の大阪での話し合いだ。
飯野謙次


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