|  ヒューストンのエレベータ事故について 会長講演:畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)
 失敗学会会長
 
 2003年に米国ヒューストン市で起こったエレベータ事故について現地調査を行った.
				市の指導部署・事故の起こった病院・遺族・事故の調査員等に接触し,事故の内容を把握した.
				かごが上昇して日本人の医師が死亡したこの事故の直接原因はエレベータ保守時の制御回路の誤配線であることがわかった.
				2006年東京都港区で起こったエレベータ事故はブレーキの摩耗によると推測されており,
				同じかごの上昇による事故であっても全く違う原因であることがわかった.
				背景要因として米国ではすでに2000年にエレベータへの安全装置の追加が推奨されていたにもかかわらずそれが実行されていなかったこと,
				また誤配線防止の対策として保守業者が着色被膜の線に交換することを提案したが実施されていなかったこと等が挙げられる.
 
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			|  民生品のリコールからわかること 副会長講演:中尾政之(なかお・まさゆき)
 東京大学大学院教授
 
 製品技術評価機構(NITE)の公開データベースから、電気製品や石油暖房機、
				福祉機器などの民生品のリコールを収集し、その失敗に至るシナリオを検討した。
				リコールといっても、1万台に1台というように低い発生確率の事故や、
				15年と異常に長い使用期間後に経年劣化で生じた事故が多く、
				普通の設計者は事故を予見できない。もちろん、技術規制に抵触している事例もほとんどないので、
				現状は設計者本人の事故予見能力に頼るしかない状況である。
				一方で、中国からの輸入品の品質は低く、過去に日本で生じた事故を辿るように失敗している。
				このあとに輸入業者が回収できればよいが、
				できないと警告するだけでそのまま、というような危険な状態が生じている。
 
 
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			|  不祥事は財産だ-プラスに転じる組織行動の基本則 理事講演:樋口晴彦(ひぐち・はるひこ)
 
 組織不祥事を引き起こした個々の構成員の問題行動は、
				あくまでも「引き金」にすぎない。その問題行動を誘発し、
				あるいは看過した組織上の問題点について分析することにより、
				その教訓を「他山の石」として組織管理に役立てることができる。
 今回は、雑司ヶ谷下水道事故、三菱化学鹿島事業所火災事故、
				三井物産DPFデータ捏造事件、吉野屋テラ豚丼事件を取り上げて解説する。
 
 
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			|  VR 体験型安全教育支援システム ゲスト講演:切川卓也(きりかわ・たくや)
 早稲田大学助教
 
 近年、工場等の大規模プラントだけではなく、教育現場や家庭において事故が発生している。
				体感型安全訓練支援システムSTSSは事故の未然防止に向けて、
				従来のVR技術に独自の体感機構を組み込むことにより、安価で体感型の安全教育を実現したものである。
 実際に体験してみることで、危険に対する感性を鍛えることが可能となっている。
				さらにVR技術をベースとしているため、可搬性はもちろん、火傷と巻き込まれ事故を同じシステムで体感できる。
 
 
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			|  失敗事例の水平展開-組織行動の視点- 組織行動分科会:石橋明(いしばし・あきら)、加藤豊(かとう・ゆたか)
 
 組織行動分科会では、2004年の発足以来、「組織行動が失敗を誘発する」という仮説に基づいて、
				組織事故や不祥事などの失敗事例を分析することによって、
				組織の意思決定に影響を及ぼす背後要因を解明する研究活動を展開している。
				組織文化、組織風土などのキーワードで表現される「組織行動の実体」を究明するために、
				組織の意思決定プロセスを調査し、事故や不祥事に至る状況の流れを探求している。
				研究成果を企業内や業界内で水平展開し、産業安全や作業ミス、失敗の再発防止に役立てるために、
				失敗事例集の編纂と啓発活動例を報告する。
 
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			|  事故発現は設計ゲームでの敗北 ゲームと失敗学分科会:飯野謙次(いいの・けんじ)
 サイドローズ社代表
 
 ゲームと失敗学分科会は、子供に危険を伝える展示コンテストを開催した。
				漠然としたテーマに対して、企画、設計、製作、使用、不具合の対処を体験した。
 産業においても不具合発生時に、安易な使用領域での対応が多く、それが被害を大きくしたり、
				同じ失敗をくり返してしまうことにつながる。不具合の発生は、設計時に思いつかなかった損傷モードの発生である。
				その根絶には、設計領域に立ち返って対策を打たなければならない。パロマ湯沸器、
				ふじみ野市プール事故について設計の問題を考える。
 
 
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			|  失敗の擬似体験活動 ~失敗体験研修®の普及を目指して~ 失敗体験ネットワーク:中田邦臣(なかた・くにおみ)
 
 失敗体験ネットワークでは、この2年間、
				事故や失敗またそれらの原因となった現物の保存を通じた“失敗に学ぶ”活動に加えて、
				失敗の“擬似体験”による再発防止活動にも力を入れてきている。
 本大会では、これまでの活動の概要、
				特に本年7月21日から27日まで横浜開港150周年記念テーマイベント市民創発プロジェクト
				「知っていますか?身近なアブナイ」他で実施した失敗の擬似体験活動を紹介し、
				これら実績を踏まえて今後の活動案について報告する。
 
 
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			|  ミスコース 大阪分科会:児玉仁(こだま・ひとし)、
 
 山の遭難原因の40%はミスコース(道迷い)でダントツに一番だそうだ。
				各種ラリーやジムカーナなどの競技におけるミスコースは「やっちゃった」
				で済まされる失敗だが、山でのミスコースは命に関わる大失敗となる。
 コース(道)を作業や仕事の「手順」と考えると、いろいろな失敗はまさに
				ミスコースの結果である。ここ数年一人ウォーキングを楽しんでいる演者自身の
				ミスコース事例や仕事上の失敗事例を紹介しながら、ミスコースの
				要因、心理、防護策などについて考えてみる。
 
 
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			| デモ:子供に危険を伝える展示 
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			| デモ:失敗知識データベース、科学技術振興機構 
   失敗知識データベースは、科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともにデータベース化したもので、
					科学技術振興機構(JST)が無料で提供しています。
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			| デモ:製品事故展示、製品評価技術基盤機構 
 
   製品の安全対策に必要な施策の充実と事故の未然防止並びに再発防止を目的とし、 
					私たちの身近な製品に関する事故j情報を収集・調査し、その結果を公表または情報提供を行っています
 
 
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			| デモ:VR体験型教育システム、早稲田大学 
   昼休み前の早稲田大学切川助教による講演の実物。
 回転機械への巻き込まれ、蒸気噴出による火傷を擬似体験。
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