
		   失敗学会懇談会も回を重ね、今回で51回目になる。東京と大阪の間でやろうと静岡を会場に選らんだ。
		一般的なお盆休みの初日にも拘らず、10名の会員が集まった。この日を選んだのは、
		翌日の御巣鷹山慰霊登山に参加しようというもくろみだった。
		   今回発表の飯野副会長は、年に一度程度の割合で発表をするようだ。
		前回は、
第35回失敗学懇談会 in 大阪
		
		での発表。
		   世の中の事故が絶えないのは、損傷モード解析(FMEA)をきちんとやっていないからであり、
		まずはそれがどんなものであるか、失敗学を語る前に実際にやってみようということで、
		身近な工業製品である旅行用ヘアドライヤーを取り上げての解説だった。単に損傷確率を計算するだけではなく、
		損傷が起こったときの被害額も乗算して各損傷を評価し、結果の数値が大きいものから潰していかなければならないという。
		また、解析に入る前にきちんとその製品の機能と構造を分析することで、FMEAの品質が高まる。
		実物を目の前にして、この解析をどう行うか一通り説明し、サンプルとして持参したヘアドライヤーには、
		工業製品として大きな欠陥があることを指摘した。
		   発表の後半は、翌日に控えた御巣鷹山慰霊登山に備え、
		日航ジャンボ機の御巣鷹山尾根への墜落事故がどんなものであったか、インターネットの映像、
		ボイスレコーダー音声を聞きながら振り返った。発表を締めくくる言葉は、
		“この事故に関しても、精神論ばかりが先行しているのが気になる。『忘れてはいけない』、『二度と繰り返してはいけない』
		という言葉ばかりが聞こえてきて、心を引き締めれば同じような間違いを避け得るかのような錯覚を起こす。
		大事なことは精神論に頼ることではなく、ぼんやりしたり、うっかりしたりする人間の作業で、
		大きな間違いが起こりえないような仕組み、体制を整えることだ”であった。