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『Risk Manager』2018年8月号掲載コラム

ダイナミックリスクマネジメント

 ある確率を計算した研究成果がひとたび発表されると、それがいつまでも消えずに人々の考察の拠り所になることがあります。たとえば指差喚呼の効果として、ミスの確率が6分の1になるという結果は、1994年当事の画期的な研究結果です。
 しかし、これはその時に行われた実証実験の結果であって、誰にでも当てはまるものでもなければ、場面によって結果も変わります。事実、その後も発表者自身も含めた研究が続けられ、工場の現場では状況に応じた効果の違いが報告されています。もちろん、古い研究成果であっても、何も根拠がなく、山勘に頼るよりはよほどましです。
 アメリカでは古くから損傷モード解析が行われており、わたしもモンテカルロ法を走らせて、原子炉の炉心溶融確率を計算していました。ネジに始まり、モーター、ギア、バルブなど、ありとあらゆる機械要素の損傷確率が元データです。1台の原子炉を1年間運転させた時、その炉心が溶融する確率が10の(-5)乗とか、新型では(-7)乗とかを目指していたように思います。
 しかし、この方法の元となる機械要素の損傷確率は出版物、すなわち紙に印刷されたデータであり、この解析は静的でした。
 2011年の福島原発事故の後、これら解析結果が見直されることとなり、事故前よりも、事故後の原発の炉心溶融確率は大きく(一桁とも二桁とも言われています)増えたと認識されています。
 私たちが生きる今は、ネットワーク技術の発展により、たとえば会社であれば、売り上げ、経費、生産、販売、不具合など、あらゆる情報をリアルタイムでデータベースに溜め込むことができます。その情報も有効活用しなければ、宝の持ち腐れです。
 データの中には、設計ミス、生産時の不具合、クレーム、不良品発生など、リスクの計算には欠かせないものがあるはずです。もちろん、リスクの計算にはうまくいった統計データ、つまり生産数、販売数、顧客のリピート率、アンケート調査の結果なども必要です。うまく行かなかったことを数えるだけではなく、うまく行ったことも計算に入れて、うまく行かない確率が初めて計算されるからです。
 これまでは、きちんとこれら結果をデータとして溜め、統計解析を行って経営や、生産計画に反映させていた会社もあるでしょう。たとえば、1年に1回の解析かもしれません。しかし、これからは、実データを元に、今ある組織のリスク成績が解析されることになります。リスクアセスメントをダイナミックデータで行って、現状を元に、今からの計画を立てるのです。
 ダイナミックリスクマネジメント、もしくは動的リスク管理と呼ばれています。ここ数年で、ネット、データベース、クラウド技術の進展とともに発展しているようです。
 不具合データを集めていただけのところが、統計処理を行うようになって、定期的なリスクマネジメントができるようになりました。今度はその統計処理の方法を定式化することによって、ダイナミックリスクマネジメントが可能になるのです。
【飯野謙次】


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