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失敗学講演の旅 19 Part2

大楠、腑に落ちる


(Part 1 はこちら)

 高松でホテルをチェックアウトし、松山のK君に連絡を取ってみると 「ぜひ、遊びに来い」との言。待ち合わせは高松に近い善通寺になった。 なんでも駅からそう遠くないところに美術館があるとのことだった。
 上の地図を作りながら思い出したのだが、そもそも私は金刀比羅宮(ことひらぐう)、 いわゆる金毘羅(こんぴら)さんを訪ねようと思っていたのだが、 その最寄駅琴平(ことひら)の手前、同じ土讃線の善通寺駅で下車することとなった。
 2年前の春合宿で工場を見学させていただいたナカシマプロペラ製、 これもドックを見せていただいた今治造船による、金毘羅さんの奉納プロペラをこの目で見ようと思っていたのだが、 目論見は見事に外れてしまった。朝の二日酔いと浮かれた友人のかん高い声は、平時に立てた計画を吹き飛ばしてしまう。 先の講演を聴かれた方から、また香川で講演を、、と来年の話も決まっているので、 そのときに改めて見よう。
 まったく関係ない話かもしれないが、私は子供のころ、 コンピラさんとは金平糖(コンペイトウ)を祭った神様だと思っていた。 さすがにヘンゼルとグレーテルに出てくるようなお菓子の社とは思っていなかったが、 お守りやおみくじを売っている横で金平糖を売っていると信じていた。 どうやらこれはなさそうだが、自分の目で自分の過ちを確認したい。

 善通寺駅を降りて周辺の地図を見ると、どうもK君が言っていた美術館がどこなのかわからない。 駅前大通りの突き当たりに、善通寺とあった。まあ時間もたっぷりあるし、 とりあえずお寺でも見るかと1キロほどの道のりを歩き始めた。
 私は“善通寺”をそれまで全く知らず、まずは思ったよりずいぶん大きいので驚いた。 写真は駅から徒歩で参内したときの入り口、南大門である。境内に入った右側に五重塔が見える。
 いただいたチラシ(と呼んだら失礼なのか、しかし正しい呼び方を知らない)によると、 善通寺は弘法大師空海(774 - 835)誕生の地である。父親が佐伯善通(さえき・よしみち)と現代にもありそうな名前なのだが、 それにちなんで善通寺(ぜんつうじ)と命名された。

 複数の説があるなか、538年に中国から伝来したとされる仏教は国家を治めるための思想として利用された。 やがて勢力を増して政治にも口を出すようになった寺社を嫌い、 対抗勢力を打ち立てんと時の桓武天皇によって唐の国に派遣されたのが最澄と空海であった。 日本史の学習で、大人になっても覚えられている僧侶の最初の人が空海であろう。 最澄に関する言葉(子供にとっては単なる“音”にしか聞こえなかった)と一緒に覚えさせられ、 空海の方はとにかくカ行、高野山金剛峰寺、真言宗の弘法大師。対する最澄は、比叡山延暦寺、天台宗の伝教大師。
 その後さまざまな僧侶が現れ、少しずつ違った教えを説き、 時には大人気を博す宗派もあれば、宗派間で争いを起こし、あるいは織田信長の比叡山焼き討ちのように弾圧されもした。 混沌とした思想活動が現代にも営々と引き継がれているのは驚異的だ。 結局人間社会はこれを捨てることができないのだろう。 “国や宗教がなければ、命をかけることもなくて平和”と唄った John Lennon は、 その歌詞に反感を持った人間に殺された。

 南大門から境内に入って左側にある大楠は、空海幼少時からここにあったとされ、樹齢少なくとも 1,200年以上だ。 ネットで調べると、空海24歳の時の著作、三教指帰(さんごうしいき)に「見上げるような豫樟(よしょう)の大木」 と描かれているとのこと。パンフレットにある通り、この楠のことだとすると1,200年どころではない。 興味を持って調べると、環境省の巨樹・巨木林調査報告書に行き着いた。 幹周が 1,236cm とある。しかしよく見ると、他の巨樹は“単木”が多いのに対し、この善通寺伽藍のは巨木林。実測6本からなる“樹林”だった。 なあるほど、それでこの奇怪な樹形も納得できた。樹齢欄には“伝承 1500年”とあった。
 これは、しまなみ海道を旅したときに見た大山祇(おおやまずみ)神社の樹齢 2,600年とされている乎知命(おちのみこと)御手植の楠も見てやろうと思ったら、あったあった、実測20本の樹林、樹齢は300年以上。 幹周は 1,100cm。 2,600年を信じる、信じないは見る人の判断だろう。
 4年の月日が経って、なぞと思っていたことがようやく腑に落ちた。こうやって大人は夢を無くしていく。

(Part 3 はこちら)
【飯野謙次】

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