失敗事例

事例名称 JR西日本新幹線トンネルにおけるコンクリート剥落
代表図
事例発生日付 1999年06月27日
事例発生地 福岡県
事例発生場所 小倉~博多間の福岡トンネル・北九州トンネル
事例概要 JR山陽新幹線小倉-博多間の福岡トンネル内のコンクリートが剥落。トンネルを走行中の新幹線ひかりに直撃し、車両屋根およびパンタグラフの一部が破損した。この事故を受け山陽新幹線の全トンネルの点検を実施したJR西日本から安全宣言が出ていたにも関わらず、約3か月後、同区間の北九州トンネルでコンクリート塊が線路脇に落下しているのが見つかった。
事象 トンネル内でのコンクリート塊剥落事件は、1996年以降多く報告されている高架橋からのコンクリート片落下事件と併せ、山陽新幹線のコンクリート構造物に対する信頼性の低下を招いた。
経過 1999年6月27日、JR山陽新幹線小倉-博多間の福岡トンネルを走行中の新幹線ひかりにコンクリート塊が落下、直撃し、車両屋根およびパンタグラフの一部が損傷した。幸いにも人的被害はなかったが、この区間は停電により運休や遅れが続出。運転再開までに約4時間を要した。同年10月9日、同区間の北九州トンネルで、コンクリート塊が下り線の線路脇に落下しているのが見つかった。JR西日本は新大阪-博多間の運転を見合わせ、3連休初日の行楽客など約6万2千人に影響が出た。
原因 福岡トンネルの事故の原因は、コールドジョイント(CJ)と呼ばれるコンクリートの不連続面にある。施工・養生・供養期間を通して、CJ内部にひび割れが発生・進展し、剥落につながったと見られている。北九州トンネルは、施工プロセスで設けられた突起状のコンクリート打ち込み口が、トンネル完成後に除去されず残され、側壁部分が沈下するなど何らかの理由で、突起部と側壁本体との間にひび割れが発生、長期間に渡る漏水・温度変化・列車振動などによりひび割れが進展し、最終的には自重で落下したと見られる。
対処 6月27日の事故を受け、JR西日本は山陽新幹線全142トンネルのCJについて打音検査による総点検を実施。不良部分の叩き落としなどの応急処置を行った。約3か月後の、CJ以外の原因による剥落事故を受け、JR西日本は、再発防止のため「あらゆる事態を想定」し、10月25日、全142トンネルを対象に、12月15日という期限を設けて過去に例の無い大点検を実施。
対策 JR西日本は、トンネルや高架橋等の検査周期・検査方法・判定基準や補修工法の見直しを行うとともに、補修工事における資格認定制度の導入や、新しい技術開発成果の積極的導入などを進め、保守管理体系の整備に取り組んでいる。
知識化 コンクリートの性質の理解と技術的対応、コンクリート施工と維持管理に関する方法論の整理と現場教育、経営者における安全管理の意識の向上、設計段階におけるメンテナンスコストの考慮。
背景 突貫工事やそれに伴う施工不良、資材不足による海砂の使用など背景として、1980年代以降、コンクリートの早期劣化が社会的問題にまで発展するようになった。
よもやま話 事故発生後のテレビ映像では、トンネル内のコンクリート壁面のハンマーによる打音検査において、上を向いた検査員が口を開けている作業状況が何回も放映され、土木技術に対する社会の信頼が低下した。本件は結果として、機械化による自動計測の原動力の一つとなったと言える。
データベース登録の
動機
日本が世界に誇る新幹線技術の一環として、国民の関心を集めた。
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、打ち込み口除去せず、トンネル側壁沈下、不注意、注意・用心不足、安全宣言後に再発、使用、保守・修理、コンクリートジョイント、打音検査、社会の被害、社会機能不全、運転見合わせ、列車運休・遅れ、組織の損失、社会的損失、行楽客6万人に影響、組織の損失、社会的損失、信用失墜
情報源 こうえいフォーラム第9号/2001.1
小林一輔「コンクリートが危ない」 岩波新書
小林一輔「コンクリート工学」 森北出版
中国新聞 http://www.chugoku-np.co.jp/
日経コンストラクション
日本経済新聞
JR西日本旅客鉄道株式会社 http://www.westfr.co.jp/
ReNEWAL NEWS http://www.renewal-news.com/
http://www.ezaki-glico.net/chara/timeslipglico4th/07.html
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 トンネル内壁剥落、新幹線車両破損
社会への影響 新幹線の安全神話に疑問符を投げかけ、国民の関心を駆り立てた。
分野 建設
データ作成者 國島 正彦 (東京大学)
石原 行博 (東京大学)