失敗事例

事例名称 ゴミピット内で足場組立作業中、落ちた部材を拾おうとして酸素欠乏症になる。
代表図
事例発生場所 ゴミ処理場のゴミ投入口のコンクリート斜壁補修工事現場
事例概要  ゴミ処理場のゴミピットの中に落とした足場材の部材を拾おうとした作業員が前のめりに倒れ動かなくなったので、それを助けようとゴミピット内へ降りた社長も、倒れ動けなくなった。
 ゴミ処理場の担当者が、救急車を呼び、レスキュー隊により2名は救出されたが、作業員は死亡し、社長は酸素欠乏症で入院した。
 原因は、酸素欠乏危険箇所で作業したことや、適正な作業環境の測定をしていなかったことである。
事象  ゴミ処理場のゴミ投入口のコンクリート斜壁補修工事において、誤ってゴミピットに落としてしまった梁を拾いに降りた作業員が、倒れて動けなくなり、それを助けようと降りた社長も倒れた。作業員は死亡し、社長も酸素欠乏症で入院するという惨事となった。
経過 ゴミ処理場の16箇所のゴミ投入口のうち2箇所の投入口のコンクリート斜壁の破損状態が著しいのでその修理を行うこととなった。
 作業手順は、
 1.ゴミ投入口に足場を設置する。
 2.コンクリート斜壁のむき出しになっている鉄筋を切り取り、新しい鉄筋をいれる。
となっていたが、災害は最初の足場を架設する段階で発生した。
 足場の架設手順は、
 1.ゴミピット内のコンクリート壁の両端に長さ20cmのアンカーボルトを2本打ち込む。
 2.アンカーボルトに、移動式クレーンを使用して長さ5mの金属製の梁を取り付ける。
 3.投入口側から、梁に足場板を掛け渡す。
 4.この要領でコンクリートの斜壁に沿って階段状に足場を組んでいき、最終的には投入口から約6mの深さまで組みあげる。
 災害当日、午前9時30分頃に、ゴミ処理場の担当者が行い、酸素濃度の測定は、二箇所のゴミ投入口の入り口付近で各1点測定した。
 作業は、2箇所の投入口の斜面補修のため積載型トラッククレーンを投入口の前に設置し、社長と作業員A、Bの3名で足場の架設作業を開始し、一方の投入口部分の足場を掛け渡した。
 もう一方の投入口の方の足場の架設を行うことになり、クレーンの運転を社長が行い、Aがクレーンに取り付けられたブランコに乗って梁の取付を行おうとしたとき、Aは持っていた梁をゴミピットに落としてしまった。
 社長は梁が落ちているゴミの上までブランコを降ろし、Aがゴミの上に載って落とした梁にクレーンのフックを掛けようとしたとき、Aが前のめりに倒れて動かなくなった。
 社長は、大きな声でAを呼んだが反応がないので、近くにあったロープの一端をクレーンに結び、ロープ伝いに降りていってAを抱え上げようとしたが、自分も前のめりに倒れて動けなくなった。
 これらの状況を知ったゴミ処理場の担当者が救急車を呼び、レスキュー隊によって2名は救出されたが、Aは死亡し、社長は酸素欠乏症で入院となった。
 作業開始前にゴミ処理場の担当者が行った酸素濃度の測定は、二箇所のゴミ投入口の入り口付近で各1点のみであり、測定値はいずれも20%であった。
原因 1.酸素欠乏危険箇所で作業した。
2.適正な作業環境の測定を実施していなかった。
3.作業計画において災害防止が充分に検討されていなかった。
4.安全衛生教育が実施されていなかった。
対処 ゴミ処理場の担当者が救急車を呼び、レスキュー隊によって2名は救出されたが、Aは死亡し、社長は酸素欠乏症で入院となった。
対策 ・発注段階で的確な情報を提供する。
・酸素濃度の測定を確実に実施する。
・換気装置又は空気呼吸器を使用させる。
・作業に適した機械を使用する。
・酸素欠乏危険作業主任者を選任して作業を実施する。
・安全衛生に関する特別教育を実施する。
知識化 ゴミピットの中は、酸素が薄い。
酸欠又はガス中毒で人が倒れていたら、助け出す前に換気する。
作業着手前に自分の働く作業環境を充分調査して知っておく。 
人は.酸素無しでは生きられない。
背景 作業環境に関する知識不足
酸素欠乏症に関する知識不足
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、勉学不足、調査・検討の不足、環境調査不足、使用環境調査不足、環境変化への対応不良、使用環境変化、作業環境変化、企画不良、戦略・企画不良、作業内容・工程・環境不良、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、定常動作、危険動作、危険場所立ち入り、非定常行為、非常時行為、パニック、身体的被害、死亡、事故死、組織の損失、社会的損失、信用失墜
死者数 1
負傷者数 1
分野 建設
データ作成者 伊貝 星治 (株式会社 イチテック)
馬場 完治 (株式会社 イチテック)