失敗事例

事例名称 合図ミスにより、列車を停めた
代表図
事例発生日付 2003年09月08日
事例発生地 千葉県八街市
事例発生場所 JR総武本線E駅構内
事例概要 ・駅舎の上屋新設工事に伴う屋根折板の締め付けを行っていた。列車見張員は約800m先に列車の進入を確認したため、工事管理者に退避の合図を送って、作業員が退避をしたことを確認してから列車運転士に退避完了の合図を行ったが、この際、黄色旗を挙げるところを誤って赤色旗を挙げたため、列車を停止させてしまった。
事象 ・営業線近接作業では工事管理者および列車見張員を配置して、列車運行の間合いに作業を行うが、列車進入の際には、一旦作業を中断し、列車見張員が列車運転士に安全に運行が可能かどうかを知らせるために合図を送ること(黄色は進め、赤色は止まれ)が義務付けられている。事故当日は退避完了の合図を出す際、列車見張員が誤動作をしたため、営業運転中の列車を停めてしまった。これにより、当該列車に2分の遅れが生じた。
経過 ・当日の作業は屋根上の工事で、工事管理者1名、板金工2名、列車見張員1名で行っていた。
・午前9時00分、工事管理者が作業開始報告を行うとともに、作業に取り掛かった。
・午前9時02分、列車見張員は所定の立哨位置についた。
・午前9時15分、列車見張員は約800m前方に列車の進来を確認したため、工事管理者に退避の合図を行った。
・午前9時16分、列車見張員は退避完了の合図を確認した後、列車運転士に見えるように赤色旗を挙げた。
・列車運転士が窓から顔を出しながら列車見張員の前を通過し、列車は駅本屋手前に停車した。
・列車見張員は列車運転士が運転席から顔を出していたため異常を感じ、挙げている旗を見たところ、赤色であることに気が付いた。
・午前9時20分、運転指令よりE駅に「駅に列車見張員が配置されているか」の確認電話が入る。
・E駅社員が列車見張員に「誤って赤色旗をあげたこと」を確認し、列車運行を再開した。
原因 ・列車見張員は、合図旗の色を確認せずに退避完了の合図を行った。
・列車見張員は、黄色旗と赤色旗を同じ扱いにして、2本とも同じ尻ポケットに入れていた。
・合図旗を挙げる前も、挙げている時も、合図の確認をしなかった。
・工事管理者は朝礼・点検時に列車見張員に対して、赤色旗の携帯方法について特に指示していなかった。
・列車見張員の携帯用具に対する事前確認、身に付け方のルールが決められていなかった。
対策 ・携帯用具のチェックリストを作成する。
・携帯用具のチェックリストによる確認、身に付け方を教育する。
・列車見張員、工事管理者の任務を明記した看板を掲示し、日々、確認する。
・列車見張員としての実務経験を確認し、経験豊富な者を配置する。
・経験の浅いものについては教育、訓練を踏まえた上で、配置する。
知識化 ・ヒューマンエラー(人は誰でも間違える)
・経験がないと同じ間違いが起こりうる。(一度あることは二度ある)
背景 ・列車運転士によると、列車見張員の脇を通過する際、運転席の窓から顔を出しただけでなく、「間違えたのか」と声を掛けたが、列車見張員からはなんの応答もなかった。
・列車運転士は赤色旗は停止信号なので所定の停止位置の手前20mに停まって事情を聞こうとしたが、列車見張員は運転士のところへ来て、説明もしなかった。
後日談 ・列車見張員は夜間の列車見張りの経験は4回あるが、旗を使う合図は一度も経験がなかった。
データベース登録の
動機
一つ間違えば、大きな輸送障害にもなりかねない。
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、不注意、注意・用心不足、取扱不適、環境変化への対応不良、使用環境変化、作業環境変化、定常動作、不注意動作、携帯時装着違反、定常動作、誤動作、誤った動作、社会の被害、社会機能不全、列車遅延
死者数 0
負傷者数 0
社会への影響 列車運転2分の遅延
分野 建設
データ作成者 北島 宗和 (鉄建建設株式会社)