失敗事例

事例名称 エポキシ樹脂製造におけるエピクロルヒドリンとジメチルスルホキシド共存系の爆発
代表図
事例発生日付 1985年01月01日
事例発生場所 化学工場
事例概要 エポキシ樹脂製造工程で発生する廃液を処理するため蒸留を行い、加熱用スチームの安全弁を調整しているときに突然爆発した。蒸留当初は、廃液中のエピクロロヒドリン(ECH)の重合熱は気化潜熱で除熱されていた。ECHが減少するにつれ、塔底温度が上昇し、ジメチルスルフォキシドの分解などを引き起こした。安全弁の点検で温度上昇に気付くのが遅れた。
発熱反応では徐熱量の設定や,2次的な分解反応の可能性などを把握しておくこと,緊急冷却などを準備することが必要であった。
事象 エポキシ樹脂製造工程で発生する廃液を処理するため、蒸留を行っているときに突然爆発した。
プロセス 製造
単位工程 蒸留・蒸発
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、図3
ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、図4
事故の種類 爆発
経過 エポキシ樹脂製造工程で発生する廃液を処理するため蒸留を行い、加熱用スチームの安全弁を調整しているときに突然爆発した。
原因 蒸留塔塔底で廃液中のエピクロルヒドリン(ECH)は重合するが、蒸留の当初は、ECHの重合熱は気化熱で除熱されていた。ECHが減少するにつれ内容物の沸点が上昇する。温度上昇でジメチルスルホキシド(DMSO)の分解などを引き起こした。蒸留が進んで塔底温度が上昇しているとき、ほかに気を取られ、スチームが余計に入り、さらに濃縮が進み温度が過大になったと推察する。
知識化 蒸留は見方を変えると濃縮である。また、バッチ蒸留で蒸留が進めば、塔底温度が上昇する。このため暴走反応や分解事故につながる危険が多い。事故事例を調査することが有効である。
背景 1.蒸留操作を行う化学物質の危険反応の可能性、反応機構を事前に把握していなかった。
2.安全弁の調整は運転中に行うものではない。推測ではあるが、安全弁の調整に気を取られているうちに、塔底物の組成がさらに重くなり、塔底温度が上昇したものと考えられる。ヒューマンエラーであり、教育の不足と考える。
データベース登録の
動機
廃液処理工程での反応危険性の認識が欠如していた事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、調査・検討の不足、事前検討不足、反応危険の検討なし、重合反応、定常操作、誤操作、操作の遅れ、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失
情報源 田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.36
死者数 1
負傷者数 1
物的被害 危険物製造所部分焼、蒸留装置全壊
マルチメディアファイル 図3.化学式
図4.化学式
備考 定常作業
分野 化学物質・プラント
データ作成者 若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)