失敗事例

事例名称 Moを含有するNi基合金の微生物腐食
代表図
機器 プレート式熱交/プレート/UNS No.N10001(Ni基合金-28%Mo)/厚さ:0.8mm
事例概要 50℃のプロセス流体を開放循環系冷却水(河川水、濃縮倍数4~5)で冷却するプレート式熱交が、使用開始約2年後に冷却水側から起った孔食・隙間腐食で貫通孔を生じ漏洩した。プロセス流体と冷却水は向流となっているが、冷却水入口側(低温部)での損傷が激しく高温側(プロセス流体入口側)では腐食軽微。
事象 冷却水の実液を用いた再現試験で、損傷再現、滅菌効果の影響(活性塩素の間欠&連続注入、煮沸)、電気化学的挙動把握、損傷部の電顕等による詳細観察、などを行った:Moを含有するNi基合金のプレートが、構造上の隙間部で微生物による腐食を起した。
冷却水は、次亜塩素酸ソーダにより [活性塩素1ppm x 1時間] の滅菌処理を毎日行っていた。しかし、本件発生のほぼ半年前からこの管理を怠っていたため、損傷に至った。
原因 微生物腐食
対策 冷却水の活性塩素濃度を常時0.3~0.5ppmに保つ連続殺菌に変更し、以後腐食の再発は認められていない。
知識化 微生物の関与する損傷は、本件のような大規模な再現試験によらねば確認し難いことを認識しておく必要がある。
シナリオ
主シナリオ 不注意、理解不足、リスク認識不足、定常操作、誤操作、ニッケル基合金熱交換器、冷却水殺菌処理不実施、破損、減肉、微生物腐食
情報源 友浦誠一郎ら:化学工場における冷却水環境でのNi基合金の微生物腐食事例、材料と環境, 505(1997)
マルチメディアファイル 図1.フォールトツリー図 Moを含有するNi基合金の微生物腐食
図2.イベントツリー図 Moを含有するNi基合金の微生物腐食
分野 材料
データ作成者 篠原 孝順 (元東洋エンジニアリング(株))
小林 英男 (東京工業大学)