失敗事例

事例名称 滞留したプロセス液と飛来触媒の想定外の反応による局部腐食
代表図
機器 分離槽下流の中間ドラム
事例概要 反応器、洗浄塔(耐食材料)、凝縮器(耐食材料)、分離槽(炭素鋼)、中間ドラム(炭素鋼)、製品貯槽から成るプロセスの中間ドラムに、竹の子状に成長した特異な腐食生成物が見られ、その下部に局部腐食が発生していた。本プロセスの凝縮器までは腐食が想定されていたために、耐食材料が使用されていた。分離槽(炭素鋼)の腐食は軽微だったが、その下流の中間ドラム(炭素鋼)に想定外の激しい腐食が見られた。
事象 (1)中間ドラムは横置きで、腐食は下部のプロセス液が滞留し易いところに生じていた。腐食は竹の子状に垂直に成長した腐食生成物を伴い、これを除去すると、その下に孔食状の局部腐食が生成していた。腐食生成物の組成およびこれが竹の子状に垂直に成長する理由については報告されていない。
(2)この上流にある同じ炭素鋼製の分離槽の腐食が軽微だったのは、縦置きで液が滞留しないためと推定される。
(3)本系では反応器で起こる反応の結果、生成する腐食性物質が洗浄塔で洗浄、除去され、分離槽で更に分離、除去されることを前提に材料選定がなされている。分離槽の下流で腐食が生じるためには、未反応物質がここで新たに反応を起こし、腐食性物質を生成したと推定せざるを得ない(著者推定)。
経過 反応液が未反応物質を含んだ状態で中間ドラムの底部に滞留し、反応器から飛来した微量の触媒の作用で新たな反応を起こして腐食性物質を生成し、これによりドラムの底部にのみ特異な局部腐食を起こした。
原因 滞留したプロセス液中の微量不純物(未反応物質)に飛来触媒が作用し、想定外の反応が進行して、局部腐食が生じた。
対策 (1)横置きドラムに若干の傾斜をつけ、その最低部にドレン抜きバルブを設置して液の滞留を防ぐ。または、(2)耐食材料に更新する。(著者意見)
知識化 有機溶媒が関与する腐食は、底部に分離、分層する水層に濃縮する腐食性物質によって引き起こされることが多い。中間槽などの底面液抜き対策は、防食対策として効果的である。(著者意見)
シナリオ
主シナリオ 未知、異常事象発生、未知の化学反応、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、運転・使用、プロセス液の滞留、触媒の飛来、不良現象、化学現象、想定外の反応、破損、減肉、腐食、内部流体漏出
情報源 宮澤正純、大津孝夫:材料と環境2004講演集、p.299.
分野 材料
データ作成者 鈴木 紹夫 (すずき技術士事務所)
小林 英男 (東京工業大学)