失敗事例

事例名称 ブレーキ不作動で、作業員がローダーの下敷きになり死亡
代表図
事例発生日付 2002年01月09日
事例発生地 米国テキサス州ウイリアムソン郡ジャレル
事例発生場所 A社の切石現場
事例概要 鉱山の石切り場でローダーを操作し、石を運んでいる際、下り傾斜を運転中にブレーキが利かないため路面の石に衝突し、運転作業者がバランスを失い座席から落ち、宙吊り状態になり、再度石に衝突した際に落下し、ローダー後輪に轢かれて頭、胴体に重傷を負い、現場で死亡。
事象 鉱山の石切り場でローダーを操作し、石を運んでいた。運転していた路は長さ約60m弱で10%の傾斜面であった。路面には大きな石やくぼみがあった。さらにローダーのブレーキが利かず石に衝突し、運転作業員は座席から落ちで片足が運転席床にひっかかり、中ずり状態になった。再度ローダーが石に衝突した際にローダーから落下し、ローダー後輪に轢かれて頭部、胴体に重傷を負った。救急車が数分後に駆けつけたが現場で死亡。
経過 事故当日、作業員A氏は通常どおり朝7時に出勤し、スキッドステアローダーの運転を始め、石を切石作業台に運ぶ作業を行っていた。午後4時頃、切石機が停止されたので、ホイールローダーを使って石切り場から石を運び始めた。トラックローダーを運転していたB氏は、A氏の操作しているローダーがランプを下り、大きな石に衝突するのを目撃した。A氏は激突の衝撃で運転席から運転台の左側に落ち、片足が運転席に引っかかったまま、身体はそこから宙吊り状態になった。再度ローダーが別の石に衝突し、A氏はローダーから落下し、ローダーの後輪に轢かれた。救急車が数分後に到着したが、頭と胴体に重症を負い、事故現場で死亡。
原因 事故後の検査によると、ローダーはサービスブレーキも駐車用ブレーキも充分利いていない状態であった。アクセルの隣のブレーキペダルはサービスブレーキシステムにつながっていなかった。また、その左側にあるペダルはサービスブレーキを作動し、ニュートラ状態にするようになっていたが、下り斜面でニュートラになったため、速度が増した可能性もある。さらにブレーキ液のタンクには漏れがあり、空になっていた。エアーシステムの弁にも漏れがあった。
対処 他の作業員はすぐに救急車を呼び、数分後に救急隊が到着した。
対策 翌日朝8時30分に鉱山保安衛生庁に報告が入り、調査団が事故現場の鉱山へ向かい、事故の調査が始まった。この現場での作業が安全であると確認される1月22日まで、この現場での作業は中止された。ローダーにシートベルトが取り付けられた。ブレーキが修理された。事故のあったローダー通路の使用をやめた。全作業員に対して必要な研修が実施された。
知識化 安全規則は必ず守らなければ、取り返しのつかない事態が起こる。路面の整備、シートベルトなど、毎日やりなれた作業では不要のように思うこともあるが、理由があって作られた規則を守らなければ、大きな事故を招く。
背景 標準装備になっているシートベルトが取り外されていた。 作業員に充分な研修が行われていなかった。ローダー通路の路面には石や溝などがあり、整備されていなかった。ローダーのメンテナンスが行われていなかった。
後日談 この事故が起こるまで、この現場での作業は鉱山保安衛生庁に登録されておらず、事故調査後に定期点検が実施された。
よもやま話 被害者は21歳という若さであった。また、この会社は従業員6名という会社である。
データベース登録の
動機
鉱山保安衛生庁は、作業者の安全を確保するためにあらゆる規則を作り、また事故のレポートをインターネットなどで知らせているにも関わらず、まだ安全規則が充分に守られずに人命が失われたことをつげたかった。一見不要であるかのように思われる安全規則も理由があって設定され、守られなければこのような事故が起こりえることを人々に理解してもらいたい。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、教育・訓練不足、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、使用、運転・使用、手順、機能不全、ハード不良、定常動作、誤動作、破損、大規模破損、衝突、身体的被害、死亡
情報源 http://www.msha.gov/FATALS/2002/FTL02m01.HTM
死者数 1
負傷者数 0
物的被害 ローダーにはほとんど損傷はなし。
被害金額 不明
全経済損失 事故の後、この現場での作業がしばらく禁止されたために生じた金銭的なダメージがあったと思われるが、それに対するはっきりとしたデータは発見できず。また、死亡した作業員の家族に対する損害賠償が支払われたと推測。
備考 鉱山保安衛生庁では、過去の事故をホームページで紹介し、事故の再発を防ぐように努めている。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)