失敗事例

事例名称 測定器が膨らんだ回転円筒にクラッシュした。
代表図
事例概要 回転筒が遠心力で膨らんでセンサにぶつかり、両者がクラッシュした(図2)。真直度と真円度だけに気をとられて、他のすべての現象に対して動的に仮想演習していなかった。結果的にはセンサが焼きついただけで幸いだった。もし、センサがスタンドごとに旋盤から吹っ飛んで検査者がケガをしたら、感覚的に考慮したという言い訳だけではすまなくなる。
事象 円筒を回転しながら真直度を測定したが、突然、センサと被測定物とがクラッシュした。
経過 薄肉の円筒を加工しながら真円度.真直度を測定するために、非接触変位計(静電容量タイプ)を旋盤上にセットした。旋盤を回転させ、真円度.真直度の測定を開始した。まず低速に円筒を回転(3000rpm)させながら測定し、無事終了した。次に回転数を上げて高速に回転(10,000prm)させながらで測定し、無事終了した。すると、センサと回転円筒とが接触し、火花を出してかじり付き、センサと円筒の両方が破損した。センサを新規購入したため200万円の実費損害が生じ、さらに納入までの3ヶ月間何もできず、実験が遅延した。
原因 回転による遠心力で円筒が膨らむことを考慮しなかったため。もっとも、感覚的には考慮していたが、これも感覚的に大丈夫と判断し計算まではしなかった。
対処 遠心力が膨らみにおよぼす影響に関して、計算と実測をまず実施した(計算はわずか1時間弱でできることであった。)低速度だがWD(Working Distance:作動距離)が数mmのセンサで“あたり”実験をやって、大体の膨らみ量が約300μmであることをつかみ、その後で高感度だがWDが100μmのセンサで真円直.真直度の測定をやり直した。
知識化 「平気だろう」と思ったことの逆が実際には起こる。できる限り計算するべきだが、計算だけでも不十分である。危ないと思ったら必ず“あたり”をつけるべきである。
よもやま話 測定は、現象の邪魔にならないようにできるだけ遠くからする。「二階から目薬」が基本である。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、誤判断、誤った理解、調査・検討の不足、仮想演習不足、不良現象、機械現象、衝突、接触、形状、手順、試験
マルチメディアファイル 図2.円転円筒が遠心力で膨らんでセンサにぶつかり、両者がクラッシュする様子
分野 機械
データ作成者 畑村 洋太郎 (工学院大学)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)