失敗事例

事例名称 アンモニアガスによる応力腐食割れで、電気製品の黄銅部品にクラックが発生した
代表図
事例概要 継電器、接触器、補助スイッチを梱包し輸出した。開梱したところ、黄銅部品にクラックが発生していた。絶縁材料などのフェノール樹脂から放出されたアンモニア(NH3)ガスが、長期密閉梱包により高濃度(数10ppm~数100ppm)となり、図2のような腐食割れとなった。対策として、密閉包装・密閉梱包をやめて通気性をもたせた。
事象 梱包輸出した電気製品の黄銅部品にクラックが発生した。
経過 継電器、接触器、補助スイッチを梱包し輸出した。開梱したところ、黄銅部品にクラックが発生していた。調査したところ、図2のような、応力腐食割れのミクロ組織が見られた。
原因 長期密閉梱包によって、絶縁材料などのフェノール樹脂から放出されたアンモニア(NH3)ガスが、高濃度(数10ppm~数100ppm)となり、図2のような腐食割れとなった。
対策 密閉包装・密閉梱包をやめて通気性をもたせた。
知識化 絶縁材料として多く使われるフェノール樹脂は、成形時モールド中に吸蔵されたアンモニアの放出や、硬化材(テトラメチレンヘキサン)の加水分解によるアンモニアの発生・拡散をおこす。どうしても密閉する必要がある場合は、シリカゲルや活性炭を適量同梱する。アンモニアフリーのジアリルフタレート樹脂などの材料を使用することや、腐食割れしにくいりん青銅を使うことも有効である。
背景 黄銅は銅と亜鉛の合金である。Zn30%のは深絞り用板に、Zn40%のは一般鋳物、板、棒材に用いられる。冷間加工材は、置き割れ(season cracking)と呼ばれる一種の応力腐食割れを生じやすく、この傾向は亜鉛が多くなるにつれて大きくなる。とくにアンモニア性雰囲気、水銀などによって激しく起こる。約200℃の低温焼きなましを行なえば、この弱点を除くことができる。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、調査・検討の不足、環境調査不足、プラスチック、アンモニア、銅、使用、輸送・貯蔵、不良現象、化学現象、物質間反応、破損、破壊・損傷、腐食
情報源 創造設計エンジンDB
理化学事典、岩波
マルチメディアファイル 図2.応力腐食割れのミクロ組織例
分野 機械
データ作成者 張田吉昭 (有限会社フローネット)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)