失敗事例

事例名称 クランクシャフトのキー溝が磨耗して回転ガタが生じた
代表図
事例概要 頻繁にクランクシャフトの加減速を繰り返す運転を続けるうちに、回転軸に回転ガタが生じた。トルク伝達しているキーがキー溝の中で動かないように、セットボルトで固定していた。しかし、シャフトと偏芯ブロックのはめあいがゆるみばめ、キーと軸のキー溝もゆるみばめであったので、繰り返し応力でフレッティング磨耗が発生したことが原因であった。対策としてシュパンリング(円筒状のくさび)に変更した。
事象 クランクシャフトの加減速を頻繁に繰り返す運転を続けていたところ、トルク伝達しているキーがキー溝の中で動かないように、セットボルトで固定してあったにもかかわらず、キー溝が磨耗し回転軸に回転ガタが発生した。
経過 クランクシャフトの加減速を頻繁に繰り返す運転を続けていたところ、回転軸に回転ガタが発生した。分解調査したところ、トルク伝達しているキー溝の磨耗が発見された。
原因 シャフトと偏芯ブロックのはめあいがH7g6のゆるみばめ、キーと軸のキー溝も並級以下のゆるみばめであったので、繰り返し応力でフレッティング磨耗が発生した。
対策 トルク伝達をキー構造からシュパンリング(円筒状のくさび)構造に変更した。
知識化 キー溝はキーが動かなくても、繰り返し応力が働くとフレッティング磨耗を生じる。進行すると隅から亀裂も進行する。キーが動かないように、勾配をつけたキーを打ち込むことも多い(勾配キーまたは打ち込みキー)。シュパンリングはそれを軸対象として回転体にしたものである。
背景 図3のように、キーの代わりに止めねじでトルクを伝えると、おもちゃでさえ回転に遊びが生ずる。止めねじはねじ先端に塑性変形を作り、盛り上がった”土手”がキー溝の役目をする。しかし、変動トルクで塑性が進みガタが生じる。
よもやま話 1969年の英国ヒンクリーポイント原子力発電所のタービン破裂事故は、キー溝を起点とする応力腐食割れであった。
シナリオ
主シナリオ 誤判断、誤った理解、概念立案ミス、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、不良現象、機械現象、構造の問題、組合不良、繰返し応力、摩耗
情報源 創造設計エンジンDB
マルチメディアファイル 図2.キーは叩かれて、キー溝を磨耗させる
図3.止めねじも叩かれて、土手が広くなりガタが生じる
分野 機械
データ作成者 張田吉昭 (有限会社フローネット)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)