このページは失敗学会員個人により構成されたもので、その内容については
失敗学会の正式見解でも、失敗学会が同意を表明するものでもありません。
  【2011.3.14】
金曜日の地震、大変な惨事となってしまいました。
テレビ映像を見るにつけ、ただただ言葉がありません。

みなさまご無事だったでしょうか。
ご縁の方々に被害はなかったでしょうか。
無力感をかみしめつつ、被害に遭われた方々に
心よりお見舞い申し上げます。

まだ余震も津波も要注意とのこと、
みなさまどうぞお気をつけてお過ごしくださいませ。


【2011.3.8】
化学生物総合管理学会/社会技術革新学会 春季討論集会
参加しました。

うわーっびっくり。
学会というのは遊びにゆくところと思っておりましたが、
外部から招へいした講師に、司会の学会の方から
「そんなあいまいな議論はなんの役にも立たない!」など、
ビシバシ厳しい発言があり、
恐ろしくて討論分科会ではほとんど自主的発言がないあり様でした。
カルチャーショック療法を受けて帰ってまいりました。

ディスカッションにおける緊張の種類と強度が
脳のパフォーマンスに与える影響、
なんていうのもおもしろいテーマかな、と考えた次第です。

基調講演では、
ソニーでリチウムイオン二次電池を開発された
西 美緒氏のお話が抜群におもしろかったです。

ソニーの井深 大氏は、評論家に
「新商品を次々出すソニーは、市場で受け入れられるか試す
モルモットのようだ」と言われて大いに開き直り、
「モルモット精神を発揮せよ!」と社内に発破をかけたとか。

研究開発から商品化に至るには、「死の谷」
西氏の言葉では、ビジネス側からの「止めろ」コールつまり
「そんなことやってなにになる」「いくら儲かる」「止めておけ」
の『止の谷』が存在する。

研究側がいくら開発をしても、「止の谷」を突破しないと
商品は世に出ない。
これが技術開発以上に一番の難関だと。

日本の企業は、「やった責任」より、「止めろ」と言って
「やらなかった責任」をこそ問う文化に変わるべきだとのご提言でした。

ソニーで研究が完成させた角型リチウムイオン二次電池も、
事業部からの「止めろ」で商品化が見送られ、
携帯電話用電池で大きく出遅れた。
他分野で成功しているとリスクを冒すことは絶対にやろうとしない。
まさに「成功は失敗の元」だ。

実名を挙げて喝破される語り口に、
体を張ってたたかってこられた強烈な個性があふれていました。
これがソニーなのかと実感した次第です。

2010年度失敗学会 冬の大会でパネラーに来られた
nite 製品評価技術基盤機構の長田 敏氏の製品安全に関する分科会では、
ご人脈の広さからガス・石油器具工業会、家電協会などさまざまな分野の方々が、
器具に安全装置を装備するまでの経緯や議論をご紹介されました。

「安全装置によるコストアップで一万円も高くなっては
消費者に負担が大きすぎる」
「しかし毎年5000〜6000件もの天ぷら火災事故が起きている現実を考えると、
社会として対応せざるをえない」
「エコ・ポイントも結構だが、火災事故の防止はもっと緊急なのだから、
セーフティ・ポイントを設けてはいかがか」

「経年劣化による事故を防ぐため、一定の期間をすぎた家電製品を
自動で止まるようにしてはどうか」
「消費者の所有物を勝手に使用できなくする設計は法的にできない」

などなど、技術的設計の観点にとどまらず、
幅広くこの間の議論が紹介されたのは大変有意義であったと思います。
なんといっても、広く多様な意見が出され、いろんな立場の方々が交流し、
知を結集していくことが、健全な社会のためにとても大切だし、
それは楽しいことだと実感しました。

いろんな意味で、とてもよい体験をさせていただいた一日でした。


【2011.2.25】
(^-^)笑顔セミナーご報告

2月25日、技術情報協会主催のセミナーに行ってきました。
正式名称 「ほっといても育つ 人材・原石の見抜き方 
       〜能力・性格を見た目・仕草で見極める方法〜」

講師は女性おふたり、男性ひとりの豪華メンバー、午前から午後までたっぷりのセミナーでした。

○第一部
富士ゼロックス梶@人事本部 人材開発戦略グループ 山ア 紅氏

 お名前は「あかしさん」とお読みします。すらっとしてスーツを素敵に着こなしたさわやかな女性で、参加者が少ないこともありますが、始まる前に他の講師はもちろん、受講者全員を自ら回って名刺交換されました。
 講義の最初には、「みなさん普段どんなお仕事をされていますか。今日はどんな関心で来られましたか」と質問されました。
 富士ゼロックス様は小林氏の設立当初から「人を大切にする」をモットーにされてきました。現在は「ひとりひとりの成長の実感と喜びの実現」を掲げて人材開発・教育に取り組まれているとのことで、現有能力のアセスメントの方法などを具体的に紹介されました。現場からは「必要なことは後から教えるから、とにかく素直でやる気のある人をください」と言われるが、企業として、部門として、目的を実現するためにどんな能力が必要なのか、明確にすることが大切と語っておられました。

 質疑応答では、個々の人材の評価だけでなく、人の組み合わせによって組織の力をアップさせるところまではまだ取り組めておらず、人材アセスメントをやっても現場へのフィードバックがないと協力が得られないなど、ほんとうに率直に応対されたので、成果を押しだして解説されるよりむしろ今後の共通の課題がはっきり見えてとても有意義だったと思います。山ア様ご自身も技術系のSEとしてキャリアを重ねたのち現在の人材開発・教育部門に移られたとのことで、ひとつひとつむつかしい課題に誠実にチャレンジして力を発揮されているご様子が伝わってきました。
 また質問に答えて30代前半で海外にグローバル研修に出されることをご紹介されていましたが、さすが富士ゼロックス様ですね。ただ、恵まれすぎていて、当たり前と思ってしまうところがむつかしいと語っておられたのが印象的でした。 


○第二部
潟xルヴィーヌ 取締役副社長 南野 美紀氏

 普段は化粧品の粘度、微生物などの分野で講師をされている南野様。「個性を読みとるというテーマでセミナーをするのは初めて。人を観るということは、自分も見られているわけで、緊張します」。まずこの目線の合い方にグッときますね。
医学博士、薬学博士の南野様が吉本を聴いて育った大阪弁で語る「観相学」はめっちゃおもしろかったです。

 「観相学って、なんか胡散臭いですよね。医学や薬学では、相関関数90%いかないとあるって言えないです。ところが社会学は30%で相関関係がある、10%でもなにか関係があるっていうくらいゆるゆるの学問なんですね。」このへんの理系の研究者らしいきっちりさが魅力です。
 「内面はその人に語っていただかないとわからない。心理学的な深いところまでは触らない」「でもあたらずとも遠からず。いろんな手法を組み合わせることによって役に立つ」。銀行員は銀行員の顔になっていくし、プロレスラーはプロレスラーの顔、政治家は政治家の顔になっていく。血液型など日本人は決めつけたがるけれど、個性は流動的なもの。本人も変わるし、環境も変わるし、自分の観方も変わる。
 観相学の人の観方だけをこうなんです、とアプリオリに教えるのでなく、観相学とはどういうものか、ご自分が向かい合うところから客観的に語られたので、とても納得できました。

 で、観相学での人の観方は、というと、例えば、3歳までに発信型か受信型かが決まる。10歳までに太陽を浴びて育つと明るくなる、と言われている。「どちらがよい悪いではなく、いろんな個性があるということですね。」

 もともと化粧品の微生物が専門分野の南野様、50人の部下を持ち、予算をとる立場になると、銀行出身の経理部長相手に説得をしなければならない。それではとMBAで経営学修士をとってしまい、さらにほんとうにやりたいことをやるには自分が経営者になるしかない、と2005年に会社を設立。このパワーもご本人を見ているとなんだか納得です。

 ここでスクリーンに彼女の会社の女性Aさん、Bさんの顔が映し出され、「この写真からどんな性格だと思いますか。どこを見て判断しますか」と質問されました。男性ふたりは、「目と口を見ている。Aさんはしっかりしている感じ、Bさんはほんわりした感じ」。私は、「どこを見ているというより、顔全体の印象で、Aさんは知性的、Bさんはおおらかな感じ」と回答しました。だいたい性格はその通りで、男性は女性の顔で目と口を観る、女性は女性の顔を全体的に観るのだそうです。知らなかったー!

 Aさんは目が大きく、正面から見て耳がよく見える。人をよく見て話を聴くタイプだそうです。「こういう人が部下にいたら要注意です。あなたはしっかり見られています。」 
 Bさんは目がちいさく、耳も前から見えません。「この人は全然周りを見ていないし、人の話もまったく聴きません。」「でもどちらがよい悪いでなく、Aさんは大卒で頭がよいけれど人のいろんなところを見過ぎて自分の中で考え込んでしまう。スタミナが切れて突然風邪を引いて休んでしまうことがある。Bさんはまったくそういうことがありませんね。人の話は聴かないけど、コツコツやっていく仕事をしてもらうと、自分で考えていい仕事をします。」

 「部下の顔をよく観てください。部下の書いた書類は見ても、顔は観てないんですね。観相学は役に立ちます。」
 人材を見抜くだけでなく、欠点を補い長所を伸ばして人を活かす経営者としての南野様の手腕、お人柄に惚れ惚れ聴き入ってしまいました。

 そして…ご自分の素顔の写真を映され、「ほとんどの人は右と左の顔が違うんですね。私の右と左、どちらが魅力的だと思いますか?」と質問。…言葉に詰まる受講者の男性。右脳と左脳が交差して右・左に表れるため、「左顔」の南野様は「感覚だけで生きてる人間」との解説でしたが、それよりこの度量の広さというか、人間のスケールの大きさに感服でした。

 最後に、「運は自分でつかむもの。運というと胡散臭いと思われがちですが、イコール今の科学でまだ実体がわかっていないものということですね。運は人にもらえるものなので、元気な人の周りに人が寄っていきます。」
 はい、南野様を見ていると完璧に納得です。



○第三部
日本感性工学会 理事 井口 竹喜氏 (元コニカミノルタ)

 ※ 井口氏講演については、あさいが自分の受け止めをまとめたものをご本人に加筆・訂正していただき、ご了承を得て以下に掲載させていただきます。構成および表現上の一切の文責はあさいにあります。

 井口氏プロフィール
一昨年までコニカミノルタで50機種にわたるカメラをデザイン、スマイルショットを開発してきた。現在は感性工学会理事をつとめ、カメラの試作などを手掛ける菊池製作所 メカトロ研究所顧問として現場からのからモノづくりを目指して多忙な日を送る。

 井口氏は、感性工学において、ハードウェア、ソフトウェアに次ぐ第三の価値、カンセイウェアを提唱。
 カメラで説明すると、初めてポケットに入るサイズで大ヒットした「ビッグミニ」はハードウェアの世界。
 オートフォーカスでピントが合った時シャッターが切れる、笑い声でシャッターが切れるというのはソフトウェア。
 スマイルショットは人間の顔に関わり、カンセイウェアの領域に入る。

 スマイルショットを通じて笑顔の研究に取り組み、笑顔は計測できるし、そのことにより、健康や心の状態のチェックなど様々なことに役立てることができると確信した。

 人間の顔は全身の中で特に30もの筋肉が集中している。スマイルショットでは、真顔と笑顔の違いを、大頬骨筋と眼輪筋に着目して目から目、目の高さから口の比率は真顔の場合はそれぞれ個性があり正規分布を取った。ところが笑顔の場合はある値に集中しちょうど黄金比があらわれ、それを「笑顔の黄金比」と呼んでいる。
 赤ちゃんは最初からこの比率をもっている。まわりに愛されるようにつくられている。

 若い中村さんという笑顔の写真家がいる。世界中1万人の笑顔を撮ることを目標に、ある企業のイベントでは奄美の人の笑顔写真を撮った。その後東京でケアセンターの職員の写真を撮ると、奄美の人と比較して、口の傾き(歪み)がある人が多いことが計測された。忙しくストレスにさらされている状況が顔にあらわれていると推測される。

 またプラネタリウムを見ているときの笑顔を計測すると、ただ星を映す番組では変化はあらわれず、エキサイティングな番組では興奮が、「銀河鉄道の夜」の静かなストーリーの番組では沈静化が見られた。画像を見て脳の中でなにが起きているのか、推測する手掛かりを得られたと思う。

 また井口氏は毎朝自分の顔写真を撮り、データを計測している。コニカミノルタを定年退職後、一年半フリーの期間があり生活も不規則で、そのときは数値がバラけていた。その後菊池製作所の顧問に就任して活動を始めると、グラフのばらつきがきれいに収束してきて、その頃受けた健康診断でも同じように良好な結果が出た。顔の計測により、健康状態を知り、未病の段階で対策をとることができると確信した。

 最近では、菊池製作所の若い人をどうしても注意する必要に迫られ、自分でもめったにないことだが、声を荒げて叱った。翌朝顔写真のデータを取ると、数値が明らかに悪化していた。若い彼にそのグラフを見せ、「あなたは叱られて当然傷ついていると思うけど、叱る方だってこれだけ傷ついているんだよ」と話した。彼はびっくりした顔をしていたが、その後、少し変わってきたように思う。
 また、ある医者は、手術の成功の度合いが、事前の面談で患者さんの顔を見るとわかってしまう。どこがどうとは言えないが、顔に生きる力があるかどうかがあらわれている、と話していた。
 橋本元首相が脳梗塞で倒れて亡くなる前、顔が歪んだ。顔には前兆があらわれる。
体温計、血圧計のように、未病のうちに発見する計測器としてカメラを活かしたい。

 動物の種類により前頭葉の大きさが異なり、その大きさは顔の表情の豊かさに比例する。ここからも、顔と脳の中は関連があるといえる。

 日本の国家予算のうち、医療費には33兆円が費やされている。定年後、居場所のない人が昼間からカラオケボックスに溜まっている。医学には「廃用性萎縮」という原理があり、重力の法則のように脳は使わないと廃用されていく。カメラがあるから老人が外へ出掛ける。これで元気になるのなら、カメラも自力を維持する「快護」用品と言ってよい。

 笑顔は副作用のないクスリ。「ありがとう」「ハッピー」などよい言葉を言うと脳にもよい影響がある。写真を撮るときの「チーズ」でもわかるように、「イ」の発音は、笑顔をつくる。言葉も立派なクスリであり、よい言葉を言わずにサプリメントに走るのは逆転している。

 みんな、本来、毎日顔で勝負している。体の中で唯一顔だけは素のままだ。それなのに、自分の顔をサービス版いっぱいに撮って見せられると沈黙してしまう。5ミリくらいに写っている自分の顔か、せいぜい免許証の写真のサイズまでしかみたことがない。自分の顔をもっとじっくり見て、神社の御鏡のように「自覚」=ディスカバー・ミーしてほしい。

 カメラはライカを超えた日本の入力装置になる。日本は産霊(むすひ)のくにである。できたら、想いを共にする方と共にカンセイウェアとしてのカメラをシサク、「始作」したいと思っている。

 ※ 最後の言葉は日本の産業界に想いをもっておられるみなさまへの、感性工学会理事、ものづくりメカトロ研究所顧問としての井口氏からのメッセージと思います。
失敗学会のみなさまのご意見、ご感想をいただけましたら幸いです。


【2011.2.12】
☆感性工学 大倉典子先生フォーラム 「安心・快適・わくわく感の測り方」感想☆

 2月12日の感性工学 大倉典子先生のフォーラム、楽しく拝聴しました。
 
 階段の段差(傾斜)の違い、手すりの有無、踊り場の有無によって、お年寄りの「安心感」がどのように違うのか、客観的に計測し数値化する実験には、たくさんの示唆をいただきました。
 「安全」と「安心」、従来は主に「安全」(行政、事業者の制度や製品での対応)の側から取り組みがなされてきたように思います。でもこの実験から考えてみるに、お年寄りはゆっくりゆっくり時間をかけて階段を下ります。途中で休む踊り場がなければ、一気に下りなければと焦ったり怖さを感じて足が強張ったりするかもしれません。ゆっくり落ち着いて下りられるのかどうか、本人にとっての快適さはもちろんですが、「安心感」が「安全」にフィードバックする点も重要と思いました。まさにこの接点=交流点こそ感性工学ならではですね。
 「階段が急だと速く下りられる」なんて回答している学生や、私たちにも、そうした気付き(考察の手がかり)をたくさん与えてくれるのがこの実験だと感じました。

 また実験を重ねられるうち、「安心」やリラックスなど、くつろぐ方の感性ばかりでは、これからの若者ほんとうにいいのか、もっとアクティブな感性が必要ではないかと、「かわいい」「わくわく」の研究へと進路を向けられたとのお話でした。これまで「かわいい」研究に関してたくさんのご発信をされていることは存じていましたが、そんな経緯があったことは初めて知りました。

 日立で植物工場の照明を開発・研究され、現在は大学で研究と同時に学生を指導されている大倉先生、やさしく温かなお人柄に触れて研究の根底にある想いの一端をうかがうことができたように思います。
 ほんとうに貴重でしあわせな体験をさせていただきました。
 大倉先生、事務局のみなさま、ありがとうございました。