注:本記述は2007年以前の分析で得られた情報を元にしており, それ以降に判明した事実や新たな知見は反映されておりません.
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検索ワード: 地下鉄工事現場     

事例ID
CB0012037

事例名称
地下鉄工事現場での都市ガス爆発

事例発生日付
1970-04-08

事例発生地
大阪府

事例発生場所
地下鉄工事現場

機器
 配管

事例概要
 1970年4月8日、大阪市営地下鉄2号線(谷町線)の延長工事現場で、地下に露出した都市ガス用中圧管の懸吊作業をしていたところ、中圧管の水取器の継手部分が抜け出したため都市ガスが噴出し、坑内に充満して引火し、10mを超す火柱とともに大爆発が起き、長さ200mにわたり覆工板が飛散した(図2、図3、図4参照)。この爆発で死者79名、重軽傷者420名、家屋の焼失、破損等495戸という大災害(天六ガス爆発事故と呼ばれている)となった。被害者のほとんどは工事に直接関係のない一般通行人である。ガス管の継手強度が通行車輌の荷重、地下鉄工事そのものの影響等により低下し、また抜け止めを行っていなかったため、ガス管が抜け出したものと見られている。この事故は、被害者のほとんどが一般通行人であったこと、被害者の数が多かったことから社会的影響が大きく、高度経済成長時代の猛烈な都市開発ブームが生んだ都市型災害として、様々な教訓を残した。

図2(クリックで拡大)

図3(クリックで拡大)

図4(クリックで拡大)


事象
 大阪市営地下鉄2号線(谷町線)の延長工事現場で、地下に露出した都市ガス用中圧管と低圧管の懸吊作業をしていた(図5、図6参照)。中圧管の水取器の継手部分が抜け出し、都市ガスが噴出し、引火して、大爆発が起きた(図7参照)。
 フォールトツリー解析の結果を以下に示す。
  • 図8 破壊形態、破壊のメカニズムとプロセスに着目したフォールトツリー図 ガス漏洩の原因としては、ガス管の破裂、抜け落ち、き裂、開口等が考えられる。事故後の調査で、中圧管の水取器の継手部分が抜け落ちており、これが原因でガスが漏洩したと推定される。
     この抜け落ちた継手と同種のものは、ほぼ8トン程度の内圧に耐えられる初期性能があるが、事故当時は約1トンのガス内圧にも耐えることができなかった。この原因として、(1)継手強度が低下していたことに加えて、(2)抜け止めを施していなかったために、(3)事故当日の工事で配管全体が宙吊りになったことにより、継手部が抜け落ちたと考えられる。
    1. の継手強度低下の原因は、初期欠陥、交通荷重による経年劣化、地下鉄工事の影響の3つと推定される。初期欠陥とはガス管の敷設工事時に生じた欠陥のことを指し、当時の作業状況、作業手順、埋設状況等からその可能性が考えられる。次に、交通荷重による経年劣化であるが、中圧ガス管の埋設深度は浅く、敷設から地下鉄工事が始まるまでの間に、地上幹線道路の車輌の交通による沈下を招きつつ振動を受け、継手強度が劣化したと考えられる。また、地下鉄工事によって、試掘、覆工のために中圧ガス管付近の掘削、埋戻しを繰返したため、短期間であるが交通荷重の影響がより大きなものとなったと考えられる。 着火源は、当初、ガス漏洩現場で火災を起こした緊急車輌と考えられていた。しかし、緊急車輌の炎が約10分間燃えつづけたことから、炎上場所直下の坑内上層の混合気は、すでに燃焼限界を超える高濃度になっており、引火の恐れはなかったと推定される。そうでなければ、着火と同時に引火しているはずである。また、爆発は炎上していた緊急車輌の付近を中心として起こったが、着火した炎が爆発現象が起きる前に混合気内を伝わっていく現象があるため、着火地点と爆発の中心が一致するとは限らない。以上より、火災を起こした緊急車輌が着火源とは考えにくく、現場にはそれ以外にも着火源となりうるものが多数想定されることから、それらのうちのいずれかと推定される。
    イベントツリー解析の結果を以下に示す。
  • 図9 継手部抜け落ちによるガス漏洩と爆発のイベントツリー図 ガス管には敷設工事が行われた当時から、継手部の締結力に何らかの初期欠陥があった。その後、交通荷重による沈下、振動を受け、継手強度が経年的に劣化し、地下鉄工事の影響でさらに低下した。工事によって宙吊りになったガス管は、抜け止めをしていなかったために、低下していた継手強度が内圧に耐えきれず、継手部が抜け落ち、ガスが漏洩した。そして、何らかの着火源により爆発に至った。


図5(クリックで拡大)

図6(クリックで拡大)

図7(クリックで拡大)


図8(クリックで拡大)

図9(クリックで拡大)


経過
 継手部が抜け落ちた中圧ガス管は、1957年5月に敷設工事が行われた。
 地下鉄工事は、地下鉄のトンネル掘削工法の1つであるオープンカット工法で行われていた。オープンカット工法とは、両側に沿って鉄くいを打ち込み、その上にH型の鉄の桁をかけて覆工板を敷き、路面交通に支障がないようにした後、地上から掘り進むものである。本工事では、26m幅の道路北側を幅約11m、深さ約5m、長さ225m掘り下げ、その上に鉄枠にコンクリートを流した覆工板(長さ2m、幅75cm、厚さ20cm、重量380kg)を敷き、工事を行っていた。
 4月8日の午前中に、前後に2箇所の直角の曲がり角がある鋼管横断部の北角の土が除去され、横断部を含む総延長200m余りの中圧ガス管全体が宙吊りとなり、横断部付近の管が水平方向に容易に動き得る状態になっていた。
 午後5時15分ごろ、地下に露出した配管類の懸吊作業中、都市ガスが突然噴出したので、作業員27名は地上に脱出した。午後5時20分、たまたま帰社途中のガス会社のパトロールカーもガス漏れを発見したので、緊急車輌と工作車の出動が無線で連絡された。また、付近の商店からの通報で消防車も到着したが、覆工板の隙間から約20mにわたり、ガスが噴出していた。このため、付近の住民と通行人に対して避難と火気厳禁を要請した。午後5時39分、覆工板上のガス会社の緊急車輌がエンジンを始動しようとしたとき、自動車は発火し、さらに噴出していたガスにも着火した。そして次第に火勢を強めていったが、午後5時47分、10mを超すと思われる火柱とともに大爆発が生じ、長さ200mにわたり覆工板が飛散した。このために人と覆工板が地上に落下し、爆発の火柱は道路の両側の家屋に延焼した。

原因
 敷設工事での初期欠陥、交通荷重による経年劣化、地下鉄工事による影響と複数の原因で継手強度は低下していた。工事関係者は工事を始めるに当たって、たとえ原因はわからないにせよ継手強度が低下していることを予測しておくべきであり、そのための抜け止めの施工を怠ったことが、この事故の根本的な原因である。

対処
 大量のガス漏れが生じたときには、工事関係者はガス会社ばかりでなく、消防、警察へも連絡する。また、ガス漏れの場所と状況により、広範囲にわたって人と自動車の立ち入りおよび火気の使用をすみやかに禁止するよう広報する。さらに、状況によっては、付近の住民に対して避難命令を出す。
 今回の事故の犠牲者の中には、最初に起きたガス漏れに対する野次馬も含まれており、自分たちが覆工板の上に立っていることも知らなかった。このようなことを二度と起こさないためにも、周囲の人をすみやかに退避させなければならない。

対策
 この事故を契機として「掘削により周囲が露出することとなった導管の防護」(ガス事業法省令77条、78条)が制定された。
  • 露出部分の両端が地くずれのおそれのないことの確認
  • 漏えいを防止する適切な措置
  • 温度の変化による導管の伸縮を吸収、分散する措置
  • 危急の場合のガス遮断措置


知識化
  • 欠陥を予測せよ 今回の事故は継手強度低下という欠陥を予測していなかったために生じたものであり、長期間使用されていたものには何らかの欠陥があると予測して行動すべきである。普段大丈夫と思ってやっていることが、全体として知らず知らずのうちに危険領域に入り込んでいくことがあるので、注意を要する。
  • 都市土木の恐ろしさ


後日談
 この事故の刑事責任をめぐって、被告側の工事業者、大阪市、大阪ガスの3者と、検察側が裁判で争った。判決は、事故発生から14年後に言い渡され、被告側の過失責任を認めるものだった。当時、都市災害の刑事裁判では無罪判決が相次いでおり、この判決は刑事裁判の流れを変え、安全の重要性を再認識させる画期的な判決となった。
 抜け止め施工については、事故防止に有効であるとして、被告3者の共同責任を認めている。

情報源
  1. 大阪ガス爆発事故対策連絡本部について(昭和45年5月) 通商産業省公益事業局ガス課
  2. 重大事故事例情報 日本ガス協会


死者数
79

負傷者数
420

物的被害
 家屋の焼失,破損等495戸

被害金額
不明

全経済損失
不明

分野
材料

データ作成者1
赤塚 広隆 (高圧ガス保安協会)

データ作成者2
小林英男 (東京工業大学)