失敗事例

事例名称 朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故
代表図
事例発生日付 2003年08月26日
事例発生地 新潟県新潟市万代島
事例発生場所 朱鷺メッセ
事例概要 2003年8月26日20時20分頃、朱鷺メッセから佐渡汽船フェリーターミナルに渡る連絡デッキのうち、新潟コンベンションセンターから立体駐車場の間の一部が落下したとの電話連絡が佐渡汽船株式会社から県港湾空港局振興課万代島再開発室に寄せられた。この事故による死者及び、けが人が一人も出ていない。
事象 2003年5月1日グランドオープンを迎えた朱鷺メッセ、同年8月26日午後8時20分頃、5ヶ月目を数える前にその連絡橋が突如崩れ落ちた。
経過 2003年8月26日   事故発生通報(佐渡汽船 → 県)
               状況確認指示(県 → 新潟万代島総合企画)、
               職員招集(県庁、現地)
               報道関係者に報道資料配付
2003年8月27日   知事コメント
               新潟東警察署、新潟東消防署による実況検分
               港湾空港局内に朱鷺メッセ連絡デッキ事故調査班設置
2003年8月30日   万代島駐車場(立体駐車場) 1階部供用再開
2003年8月31日   万代島駐車場(立体駐車場) 2階部供用再開
2003年9月 1日   万代島駐車場(立体駐車場) 全面供用再開
               朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員会現地調査開始
               朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故第1回調査委員会
               朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員会委員長等記者会見
2003年9月 6日   朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故第2回調査委員会
2003年9月 9日   新潟県警等による実況検分
2003年9月19日   港湾空港局振興課万代島再開発室に復旧班設置
2003年9月30日   朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査報告(経過報告)
2003年10月20日  朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員からの情報公開
2004年1月16日   朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故第10回調査委員会
2004年9月3日    朱鷺メッセ連絡デッキの復旧に関わるアンケート調査結果、
               歩行者・車両通行量調査結果の公表
2004年10月5日   朱鷺メッセ連絡デッキ補強検討委員会を開催
原因 落下状況から判断すれば直接的原因は次の何れかにある。
1) 斜材ロッド定着部コンクリートの破損
2) 鉄骨上弦材の破断または座屈
3) PC 床板の曲げ破壊または圧着用PC 鋼より線の破断
対処 佐渡汽船株式会社による事故の連絡後、その日の内に当該施設を管理している新潟万代島総合企画株式会社へ状況確認及び安全確保を図るよう指示するとともに、現地に職員を派遣した。その翌日には、港湾空港局内に朱鷺メッセ連絡デッキ事故調査班設置し、復旧作業に関しては、9月1日までに万代島駐車場の全面供用再開へと漕ぎつけることができた。
対策 施設設置者である新潟県は、事件直後の2003年8月27日に県庁内に施設設置者として、現場の復旧方法の検討や事故原因究明を目的とする「朱鷺メッセ連絡デッキ事故調査班」を港湾空港局土木部の職員で組織し、9月1日に、自己原因の究明作業の透明性、客観性を確保するとともに、的確な原因究明をとこれを踏まえた復旧方法の検討を行うため、第三者機関として「朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員会」を設置した。
アトリウム前・入江側両連絡デッキについて、安全性が十分確保された補強を行う必要があることから、補強設計に対し、高度な知見を有する専門家による技術的指導・助言及び設計に関する客観的評価を得るため、最新の対策として「朱鷺メッセ連絡デッキ補強検討委員会」を設置した。
知識化 構造の安全性とは、たとえば経済性、施工性、環境への対応、美しさの実現などと折り合いを保ちながら獲得されるべきである。
また発注者は、設計、工事監理、施工の適切な遂行に必要な期間や資源を確保し、さらに、設計者、工事監理者、施工者間の共同体制の構築が容易であるような発注形態を取る必要がある。特に、朱鷺メッセの様に建築物の構造等が複雑で特殊な場合に県は、専門家の意見を聴取すること等により発注の成果の妥当性を確認すべきである。加えて設計・工事監理に関しても、責任の持てる技術組織の下で行われ、専門家を含む検討会等で、安全性に関する確認が行える体制の確立について検討を進める必要がある。
背景 朱鷺メッセにおける事業は、1992年新潟県が、万代島に国際交流拠点の整備方針を決定したことに端を発する。2003年5月1日グランドオープンを迎えた。場所は信濃川河口の万代島に位置し、展示場、会議場がアトリウムを介してタワーと一体的に構成されている。各施設の連繋とともに、信濃川に開かれた都市回廊としてウォーターフロントの散策や寛ぎの場にもなっている。またそのシルエットは、島全体の新しいランドスケープの核となっている。
構造に関して、当該構造物は、地上レベルの車道線を確保するために不規則なスパンを持つ連続桁構造である。上弦材の鉄骨と下弦材のPCa床板が、束材と吊りロッドによって一体化された平面トラスであるが、スパン中央部は斜材がなく吊り型構造の併用をしている。また事故当時の天候は、強風もなく晴天であった。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、監理不良、企画不良、戦略・企画不良、組織運営不良、構成員不良、誤判断、狭い視野、非定常行為、変更、手順変更、破損、大規模破損、連絡デッキ一部崩落、機能不全、ハード不良、社会の被害、社会機能不全、完成間もない公共構造物崩壊、社会の被害、人の意識変化、公共工事への不信
情報源 http://www.pref.niigata.jp/gateway/messe_jiko/
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 朱鷺メッセから佐渡汽船フェリーターミナルに渡る連絡デッキのうち、新潟コンベンションセンターから立体駐車場の間の一部が落下。
社会への影響 完成間もない公共構造物が、自重のみによって突然前触れもなく落下したことは、大きなショックを住民に与えたとともに、設計者、監理者の責任の所在が裁判等で明確になることが望まれる。
マルチメディアファイル 図2.朱鷺メッセ連絡デッキ
分野 建設
データ作成者 國島 正彦 (東京大学)
三浦 倫秀 (東京大学)