失敗事例

事例名称 氷点下で高性能AE(空気連行;Air Entrained)減水剤の使用により打設不能
代表図
事例発生地 寒冷地
事例発生場所 寒冷地で冬季施工されるPC上部工の工事
事例概要 寒冷地で、高性能AE減水剤を添加したコンクリートを打設しようとしたところ、現場到着時のスランプが安定せず、打設作業を一旦中止した。
事象 寒冷地で冬季施工されるPC(プレストレストコンクリート)上部工の工事において、高性能AE減水剤を添加したコンクリートを打設しようとしたところ、現場到着時のスランプ(コンクリートの軟らかさを示す指標)が安定せず、品質管理が不可能な状態となり、打設作業を一旦中止した。
経過 ・高性能AE減水剤については、減水効果とスランプ保持性が高いことなどから、一般的なPC上部工工事に採用されてきている。
・本工事は発注時点より冬季施工が求められており、防寒対策および試験練りなどが実施されていた。                                                 
・打設日の気温が試験練り日よりも極端に低く、コンクリート温度が極めて低い状態であったことと高性能AE減水剤の添加量が適切でなかったことにより、スランプが安定しなかった。
原因 ・打設日の気温が試験練り日よりも極端に低く、コンクリート温度が極めて低い状態であったことと高性能AE減水剤の添加量が適切でなかった。
・高性能AE減水剤の添加量が少ない場合、効果発現が不安定になった。
・練り混ぜ機器(ミキサー)の能力によりスランプが不安定になった。
対処 再試験練りを実施した。
対策 ・コンクリートの温度管理を確実に実施する。
・実機による試験練りを実施する。
・特に低温時においては、高性能AE減水剤添加量が少なくなることから、スランプに与える上記の影響が大きくなることを認識する。
知識化 ・コンクリート温度管理を確実に行うこと!!!                           
・高性能AE減水剤を含め、混和剤の性能(敏感度)を正しく認識し、適切な性能を有する混和剤を選定すること!!!                                      
・配合の決定後、必ず実機による試験練りを行うこと!!!
背景 ・比較的新しい材料に対する認識不足があったことが考えられる。上述したが、高性能AE減水剤を含め、混和剤の性能(敏感度)を正しく認識し、適切な性能を有する混和剤を選定することが重要であり、現場技術者および生コンメーカー技術者の混和剤に対する知識向上が必要である。
後日談 再試験練りを実施した結果、以下のようなことがわかった。
・高性能AE減水剤の性能にコンクリート温度の影響が大きい。
・減水剤の添加量が少ない場合、効果が不安定になる。
・練り混ぜ機器(ミキサー)の能力によりスランプが不安定になる。
よもやま話 再試験練りを実施し、高性能AE減水剤の使用に対する知識不足があったことを再認識した。
データベース登録の
動機
今後も同様なトラブルが発生することが予想されるため。
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不足、無知、知識不足、勉学不足、調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、計画・設計、計画不良、知識・確認不足、使用、運転・使用、実機による試験練りの未実施、不良現象、化学現象、材料劣化
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 当初打設予定量の40%を破棄
被害金額 150万円程度(破棄した生コン量を100m3程度とし、材料費のみを考慮した金額)
分野 建設
データ作成者 田中 巳代 (社団法人 プレストレスト・コンクリート協会)