失敗事例

事例名称 作業用足場を押したところ、足場が転倒し、転落
代表図
事例発生日付 1999年02月23日
事例発生地 鹿児島県姶良郡隼人町
事例発生場所 商業店舗屋根部の看板下地・シャッター取付け工事現場
事例概要 商業店舗の屋根部の看板下地とシャッター受け(トラス)の取付け工事を行うため、移動式足場2組を組み合わせた作業用足場に作業員2人を載せたままその足場を押したところ、作業用足場がバランスを崩して転倒した。上に乗っていた2人が転落し、下にいた作業員1人もその作業用足場にはさまれた。
事象 1999年2月23日、18:00頃、移動式足場(3層で高さが5.3m、幅2スパンで3.65mの枠組足場に脚輪をつけたもの)2組を向かい合わせに置き、その間に鋼製布枠を渡した作業用足場を使用してシャッター受け(トラス)の取付け工事を始めた。
4つ目のトラスの取り付けを行うため、作業員2人を乗せたままの作業用足場の下方部分を2人の作業員が押したところ、全体のバランスが崩れて転倒し、このため上に乗っていた2人の作業員が転落し、同時に下方部分で押していた作業員1人が倒れてきた作業用足場にはさまれ負傷した。
経過 ・作業員2人を乗せたままの作業用足場の下方部分を2人の作業員が押した。
・作業用足場全体のバランスが崩れて転倒した。
・上に乗っていた2人の作業員が落下した。
・下方部分で押していた作業員1人が倒れてきた作業用足場にはさまれた。
原因 ・3層構造の足場を2つ組み合わせた不安定な構造の作業用足場であったため、少し強く押しただけで転倒したこと。
・少人数で無理に移動させたため、作業用足場がバランスを欠いて転倒したこと。
・作業期間が限られていたため、元請の現場代理人が十分に安全な作業方法を検討することなく、作業の準備を怠り、的確な作業指示をしていなかったこと。
・作業用足場の最上部に手すりを設けず、また、昇降設備もなく、最大積載荷重の表示も行われていなかったこと。
対策 ・この作業用足場は法令上、移動式足場に該当するものであり、安全な作業方法についての検討を行い、適切な作業計画を作成し、安全な作業方法を定めておくこと。
・枠組足場に脚輪をつけて使用する場合には、転倒防止のため、バランスの取れた形状のものに組み立て、不意に動くことのないような控え等で固定すること。また、建枠については、構造規格に定める構造のものとし、手すり、昇降設備を備え、最大積載荷重の表示を行うこと。
・足場には最上部の作業床に作業員を乗せたまま移動しないこと。また、足場を移動させる方法についてもあらかじめ検討のうえ、関係者に周知すること。
・下請の現場代理人や元請の現場管理者は、自らの安全意識を高め、作業員に対する安全教育を徹底すること。
知識化 ・移動式足場は正しく組立て、安全な作業方法により作業を行うよう徹底する!
・元請や下請の現場責任者は、自らの安全意識を高め、作業員に対する安全教育を徹底せよ!
背景 ・この災害が起った背景には、不安定な構造の移動式の作業用足場を採用するに至った事情があった。
当初の計画では、シャッター受け(トラス)の取り付け方法として、溶接を行う箇所に移動式足場を設置し、まずL形鋼を溶接した後、積載型トラッククレーンでトラスを一組づつ吊り上げ、直接屋根の梁のL型鋼を仮置きし、溶接するはずであった。
しかしながら、屋根が邪魔になるところから、作業段取り上うまく行かないので、結局、移動式の作業用足場を無理に組み立てることになった。
しかも夜間になり、作業時間を節約しようとして、不安定な構造の作業用足場を急いで無理やり組み立てることになった。
さらに、作業を急ぐあまり作業員2人が無理に足場を押したので足場のバランスが崩れて転倒したものであり、当然の成行きであったといえる。
後日談 ・ずさんな安全管理状況に対し、法令違反により行政処分が行われた。
データベース登録の
動機
・短期間のこの種の工事では、これまでも数多くの様々なタイプの災害が発生しており、基本的な安全対策を徹底させる必要があるものと考えた。
シナリオ
主シナリオ 誤判断、誤った理解、詳細な作業用足場の計画ミス、手順の不遵守、手順無視、足場の移動の操作手順の無視、無知、知識不足、過去情報(移動式足場の組立方法など)不足、移動式足場の構造規格の勉学不足、経験不足、組織運営不良、管理不良、移動式足場の組立と移動の作業管理不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育訓練不足、価値観不良、安全意識不良、足場の組立てと移動の安全対策不足、リスク認識不良、安全教育・訓練不良、定常操作、手順不遵守、誤った操作、定常動作、危険動作、安全不備な動作、作業員転落、製作、ハード製作、移動式足場の組立て、破損、破壊・損傷、作業用足場の転倒・倒壊、身体的被害、人損、作業員の転落、身体的被害、負傷、重傷/軽傷
情報源 ・安全衛生情報センター(労働災害事例)
死者数 0
負傷者数 3
物的被害 作業用足場他
被害金額 不明
全経済損失 不明
社会への影響 ずさんな安全管理状況に対する世間一般の不安感と信頼感の失墜や建設業界へのイメージダウンをもたらす。
分野 建設
データ作成者 狩野 幸司 (建設業労働災害防止協会)