失敗事例

事例名称 軽量梁式支保工が小梁用型枠材から外れ、荷とともに落下
代表図
事例発生日付 1999年07月29日
事例発生地 秋田県秋田市
事例発生場所 屋内温水プール 建家新築工事現場
事例概要 屋内温水プール建家新築工事現場において、屋上スラブのコンクリート用型枠支保工の組立作業中に、移動式クレーンで型枠材の束を、すでに敷設しているコンクリート打設用の型枠支保工の上に運搬していたところ、突然、軽量梁式支保工とコンパネの床材が小梁用型枠材から外れ、荷卸しした型枠材の束と鉄筋と一緒に落下し、作業員1人が重傷を負い、また、直下で単管を運んでいた別の作業員が死亡した。
事象 1999年7月29日、午前中、プール管理棟の1階スラブの型枠支保工を組立てるため、移動式クレーンで型枠材の束(約790kg)を、すでに敷かれていたコンクリート打設用の型枠支保工の上に運搬して置いたところ、突然、型枠支保工を構成している軽量梁式支保工とコンパネの床材が小梁用型枠材から外れ、同時に荷卸しした型枠材の束と鉄筋(フープ筋)が一緒に落下した。
そのため、既設の型枠支保工の上で吊上げた型枠材の束の玉掛け、誘導作業を補助していた作業員が、落下した型枠材の束等と一緒に1階床上に落下し、2ヶ月の重傷を負った。また、この作業の直下で単管2本を運んでいた作業員も落下してきた型枠材の束等に激突されて死亡した。
経過 ・移動式クレーンで型枠材の束を型枠支保工の上に運搬し、荷卸しをした。
・軽量梁式支保工とコンパネの床材が小梁用型枠材から外れた。
・作業員1人が荷卸しした型枠材の束と鉄筋が一緒に落下した。
・この作業の直下にいた作業員が落下してきた型枠材の束等に激突された。
原因 ・移動式クレーンで型枠材の束を荷卸しした箇所は、コンパネの床材と軽量梁式支保工を小梁用型枠材に載せただけの不安定な状態であったため、型枠材の束等の重量に耐えられず、コンパネ(木製の型枠合板)の床材と軽量梁式支保工が小梁用型枠材から外れたこと。
・小梁用型枠材を支えていたパイプサポートは、2列3箇所(6本)で取付けられていただけの構造のものであり、しかも根がらみや水平つなぎが取付けられていなかったため、型枠材の束や鉄筋を支えることができず、倒壊したこと。
・型枠支保工の組立て作業を行っている区域の直下に、作業員の立入禁止措置をとることなく通行させていたため、作業員は落下物をよけることができなかったこと。
・組立てる型枠支保工の安全性について、現場責任者らが確認もせずに荷卸しの作業を行わせたこと。
・型枠支保工の組立図のチェックや組立て作業の指示や作業状況の監視など統括安全管理を行っていなかったこと。
対策 ・型枠支保工は、組立図及び作業手順に従って組み立てること。
・特に、型枠材等の重量物を仮置きする場合には、上部工は十分な強度を保持できるよう、水平つなぎ等により堅固なものとし、取付け部の強度についても点検確認を行うこと。
・移動式クレーンを用いて荷の積卸しを行うときは、あらかじめ荷の仮置き箇所の安全性を確認するとともに積卸しに付随する玉掛け・外しの作業は安全な場所で行うこと。
・型枠支保工の組立作業を行っている箇所の直下は立入禁止措置をとること。
・関係請負人及び元請は、現場の作業状況を確認し、必要な安全上の指示を行うこと。
知識化 ・型枠支保工の上部に資材を仮置きする場合は、あらかじめ上部工の強度を十分に点検・確認を行うべし!
・型枠支保工の組立作業や荷の積卸し作業中は、周辺地域への作業員の立入禁止措置を徹底せよ!
背景 ・この事例のようにかなり大規模な工事であっても、地方都市の場合、油断すると発注者側の工事施工中の安全確保に対する関心が薄い傾向がみられる。
・また、元請も油断すると型枠工事関係は専門工事業者まかせとしているケースもあり、施工前の組立図の点検、施工中の監督・監視といった統括管理が不十分となりがちである。
データベース登録の
動機
・同種、類似の労働災害が絶えないので、再発防止の教訓として発表し、くり返さないことが大切である。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、型わく支保工の組立作業計画の検討不足、移動式クレーンによる荷の積卸し作業方法の検討不足、組織運営不良、管理不良、型わく支保工の管理不良・緩み、荷積卸し作業管理の不良、価値観不良、安全意識不良、型わく支保工の点検、補強方法などの安全対策の不足、関係作業員に対する安全教育・訓練不足、リスク認識不良、誤判断、誤った理解、詳細計画ミス、誤判断、狭い視野、未経験、不慣れ、無知、知識不足、過去情報不足、経験不足、使用、保守・修理、型わく支保工の点検、補強、定常動作、危険動作、型わく支保工の作業直下の危険場所への立入り、誤対応行為、連絡不備、連絡不十分、破損、破壊・損傷、型わく支保工等の倒壊、身体的被害、人損、落下、身体的被害、負傷、重傷、身体的被害、死亡
情報源 ・安全衛生情報センター(労働災害事例)
死者数 1
負傷者数 1
物的被害 型枠支保工関連資材など
社会への影響 この労働災害は、公共施設建設工事で発生したのものであり、現場のずさんな施工管理・安全管理の状況が表面化したものである。建設業界の人命尊重に対する軽さ、不安感、不信感を被災者の家族や世の中の多くの人に与えた影響は大きいものがある。
分野 建設
データ作成者 狩野 幸司 (建設業労働災害防止協会)