失敗事例

事例名称 中小河川改修事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため樋管が不安定な状態になっているもの
代表図
事例発生日付 1995年
事例発生地 山梨県
事例発生場所 県庁
事例概要  樋管の付替え工をする際、誤って応力計算を行わないまま標準図に表示されたとおりの配筋をしたため、樋管の設計が適切でなく不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額6,860,000円が不当と認められる。
事象  標準設計によると、標準図における縦方向の主鉄筋は鉄筋コンクリート部材として必要な最小の鉄筋量などを表示したものであり、実際に標準設計を採用する場合、縦方向の主鉄筋については、前記の設計条件及び基礎地盤、構造物の長さ等の設計条件に基づき、個別に応力計算を行って設計することとされている。しかし、本件樋管については、誤って応力計算を行わないまま標準図に表示されたとおりの配筋としていた。
 そこで、本件樋管の縦方向の主鉄筋について、上記の設計条件に基づき応力計算を行ったところ、吐け口側の樋管(延長27.0m)については底版の主鉄筋に生ずる引張応力度が3,916重量キログラム毎平方センチメートルとなり、許容引張応力度1,600重量キログラム毎平方センチメートルを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えていた。そして、この樋管の2箇所において全周にわたって亀裂(幅最大3ミリ及び4ミリ)が生じており、また、樋管の中央部で最大45ミリ沈下している状況であった。したがって、吐け口側の樋管は、設計が適切でなかったため不安定な状態になっていた。
経過 ・鎌田川の拡幅に伴い在来の河川堤防を後方に移築するため、築堤盛土工、樋管の付替え工等を国庫補助金50,779,000円で実施した。
・このうち樋管の設計に当たっては、建設省制定の土木構造物標準設計に示されたボックスカルバート構造図の中から、内空断面の設計条件を満たすものを採用していた。そして、樋管の縦(水流)方向の主鉄筋については、その標準図のとおりに配置設計し、これにより施工していた。
・標準設計によると、実際に標準設計を採用する場合、縦方向の主鉄筋について個別に応力計算を行って設計することとされている。しかし、本件樋管については、誤って応力計算を行わないまま標準図に表示されたとおりの配筋としていた。
・したがって、吐け口側の樋管は、設計が適切でなく不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額6,860,000円が不当と認められた。
原因 設計者が土木構造物標準設計をよく注意して読まなかった。また、許容応力を大幅に下回っていたことから、鉄筋にかかる引張力に対する大まかな感覚もなかったと考えられる。
対策  設計者に対し、標準設計をよく読むよう通達する。設計者には、もっと知識のある者を適用する。または、最後には必ず知識のあるものがチェックを行う。
知識化  標準設計は絶対順守。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、標準設計検討不足、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、計画・設計、計画不良、設計不良、機能不全、諸元未達、強度不足、起こり得る被害、潜在危険、崩壊
情報源 平成8年度決算検査報告(会計検査院)
被害金額 不当と認められる国庫補助金交付額 6,860,000円
マルチメディアファイル 図2.横断面図
図3.樋管概念図
分野 建設
データ作成者 米澤 明男 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)