失敗事例

事例名称 駐車場整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、コンクリート舗装工が工事の目的を達していないもの
代表図
事例発生日付 1995年
事例発生地 東京都中央区
事例発生場所 駐車場工事現場
事例概要  駐車場の躯体工で、設計図書のとおりに作業を行わなかったため、各柱を中心として放射状の亀裂が発生し、舗装の耐久性は著しく低下していた。検査したところ、コンクリート舗装工の施工が設計と著しく相違しており、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額9,281,500円が不当と認められた。
事象  躯体工は、鉄筋コンクリート構造の駐車場の躯体本体を構築するもので、その床版コンクリートの上には、自動車が走行、駐車するため厚さ8センチから23センチ(平均15センチ)のコンクリート舗装を計6,567m2施行した。このコンクリート舗装については、設計図書等によると、全体を1,351m2から1,903m2の4ブロックに分けて、1ブロックずつ次のように施工することとなっていた。
(ア) 床版コンクリート上に地下水対策用の湧水マットを敷設する。
(イ) 自動車荷重の影響を大きく受けるコンクリート舗装上部を強化して、発生する亀裂の進行を防止し耐久性を向上させるため、湧水マットの上に、鉄網(径6ミリ、網目15センチ×15センチ)をスペーサを用いて舗装仕上がり表面から5センチ下の位置となるように設置し、鉄網の位置を確認しながらコンクリートを打設する。
(ウ) コンクリート打設の翌日、乾燥に伴う収縮や温度の変化による伸縮によって耐久性に影響を与える有害な亀裂が発生するのを防止するため、コンクリートカッターにより、118本ある柱の間隔(縦5.6m及び8m、横8.5m)を標準として、舗装の表面から底面まで切断して目地を設ける。
 これを検査したところ、コンクリート舗装には、各柱を中心とした放射状の亀裂が全面にわたって発生していた。そこで、目地などについて調査したところ、次のようになっていた。
(ア) 目地は、舗装の底面まで達しておらず、表面から2センチの深さまで切れ目を入れただけのものであった。このためコンクリート舗装は、一枚の面積が1,351m2から1,903m2の大きな構造物となっており、乾燥収縮等に十分対応できず有害な亀裂が発生しやすいものとなっていた。
(イ) 亀裂部のうち1ブロック当たり6箇所又は7箇所計25箇所からコアを採取して調査したところ、確認できた24個のコアの鉄網の位置は、全般的に舗装の表面から5センチの位置より下方にあり、半数は表面から10センチ以上下方となっていた。
 亀裂はコアを採取した25箇所のすべてにおいて舗装の底面まで達しており、本件コンクリート舗装は耐久性が著しく低下していることが確認された。
経過 ・東京都中央区が、日本橋浜町地区において、公園の地下に駐車場(地下一層、自動車200台収容)を新設するため、土工、躯体工等を国庫補助金1,351,974,225円で実施した。
・このうち躯体工は、鉄筋コンクリート構造の駐車場の躯体本体を構築するもので、コンクリート舗装を計6,567m2施行した。
・設計図書通りに作業を行わなかったため、各柱を中心として放射状の亀裂が全面にわたって発生していた。
・本件コンクリート舗装工は施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額9,281,500円が不当と認められた。
原因 目地が舗装の底面まで達していなかった。また、スペーサが倒れ鉄網がさがっているものがあるのに、そのままコンクリートを打設した。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、作業への理解不足、非定常行為、変更、設計図書不遵守、破損、破壊・損傷、亀裂、社会の被害、社会機能不全、インフラ機能不全
情報源 平成8年度決算検査報告(会計検査院)
被害金額 不当と認められる国庫補助金交付額 9,281,500円
マルチメディアファイル 図2.コンクリート舗装概念図
分野 建設
データ作成者 米澤 明男 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)