失敗事例

事例名称 減圧蒸留装置の塔底油ポンプのドレン弁の開放によるボトム油の流出による火災
代表図
事例発生日付 1998年04月16日
事例発生地 千葉県
事例発生場所 製油所
事例概要 製油所の減圧蒸留装置の性能試験を行うことになった。減圧蒸留塔塔底油のサンプリング場所として、塔底油ポンプ出口ドレン弁が候補になり、貫通しているかどうかの事前調査を始めた。ドレン弁を開いたが、最初は油が出てこなかったので、バルブを開放のまま相談を始めた。しばらくして、つまりが解消して重油が流出し、発火して火災となった。この事前作業は非定常作業とされてなく、作業マニュアルがなかった。
事象 製油所の減圧蒸留装置で、性能検査をすることになった。減圧蒸留塔のボトム油は当然サンプル対象になり、塔底油ポンプ出口ドレン弁がサンプリング箇所の候補となった。サンプリング箇所の事前調査のため、貫通しているかを確認するためにそのドレン弁を開いた。開いても出てこないのでそのままにして、しばらく対処を相談していたところ、暖まって詰まりが解消し、高温の重油が流出し火災となった。
プロセス 製造
単位工程 蒸留・蒸発
物質 重油(fuel oil)
事故の種類 漏洩、火災
経過 1998年4月16日 減圧蒸留塔の塔底油ポンプの出口配管のドレンノズルが貫通しているかを確認するため、バルブを開いたが油は出てこなかった。
 さらに開いたが油は出てこなかったため、次の手順の相談を始めた。
19:22 開いたままの弁から高温の重油が突然流出し始めた。
09:25 約1000Lが流出した数分後に火災となった。
 装置を緊急停止をした。
 自衛消防1台5人と共同消防3台8人が出動した。
09:39 公設消防に通報した。16台49人が出動した。
10:35 火災を鎮圧した。
原因 作業の詳細が分からないのでなぜ詰まりが解消したのかは不明である。多分、閉塞させていたのは、ドレンノズルが冷却されて固まっていた残査油であろう。少し流れる道が出来ると、全体が融解し流れる可能性がある。バルブ開放のままで放置したことが原因としか思えない。
対処 1.装置の緊急停止をした。
2.自衛消防の大型化学車により泡消火を行った。
3.公設と自衛消防が放水により冷却した。
対策 1.別のドレン弁によって閉止も脱圧もできないドレン弁からのサンプリングを以後禁止する。
2.サンプリング箇所の事前調査も非定常作業とし、作業マニュアルを作成する。
3.従来と異なる作業にあたっては、事前に安全面などを十分に検討する。
知識化 1.長期間使っていない弁は、閉塞や固着が生じやすく円滑に流れることを期待しない。
2.サンプリング作業は手作業のことが多く、いったん火災になるとその弁を閉められなくなるので、別の弁を閉めることにより漏れを止めることができる箇所をサンプリング地点として選択する。 
3.調査を行う時は、あって欲しくない結果が出る時も当然ある。悪い方の想定をして対策を検討しておくことが必要であろう。
背景 1.配管内に高温油があるとき、ドレン弁が詰まっているからと言って、"開放のままで放置"したのでは作業基本からの逸脱であろう。ましてポンプ吐出で圧がかかっている。
2.貫通しているかを確認しているにもかかわらず、貫通していない場合の対策を何も考えていないようだ。準備不十分で始めた作業に思える。
3.作業手順書がなかったとか、非定常作業の管理が不十分とかも言えるが、それ以前の問題と考える。
よもやま話 ☆ 運転装置でのサンプリングの原則はいくつかある。流れのある部分を選ぶ、できるだけ低圧の部分を選ぶなどがある。事情があるのだろうが、何故ポンプの吐出の最高圧で最も温度の高い箇所を選んだのであろうか。
データベース登録の
動機
閉塞したドレン弁を開放したままで、処置を相談中に液が噴出した例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、溶解、二次災害、損壊、漏洩・火災
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例‐平成10年(1999)、p.56-57
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成11年版‐(2000)、p.150
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 火災により塔底油ポンプ出口付近焼損、電源ケーブル焼損.
被害金額 10万円(消防庁による)
分野 化学物質・プラント
データ作成者 板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)