失敗事例

事例名称 振動によりフランジがゆるんで漏洩したことによる合成ゴムプラントの火災
代表図
事例発生日付 2000年12月01日
事例発生地 千葉県 袖ケ浦市
事例発生場所 化学工場
事例概要 特殊ゴムの製造装置で、使用中のポンプ吐出フランジから漏洩と火災が起こった。原因はポンプの振動に起因してフランジがゆるみ、ヘキサン溶液が漏洩し、静電気火花により着火、火災となった。配管の振動を重大にとらえるべきであった。
事象 エチレンプロピレンゴム(EPゴム)製造装置の未反応原料回収槽移送ポンプ付近から、ヘキサン溶液が漏洩し火災となった。
プロセス 製造
単位工程 移送
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 ヘキサン(hexane)、図3
エチレン(ethylene)、図4
プロピレン(propylene)、図5
事故の種類 漏洩、火災
経過 2000年12月1日15:35頃 通常運転中、未反応原料回収槽から洗浄工程へヘキサン溶液を移送するポンプの吐出第一フランジから、ヘキサン溶液が漏洩し、着火燃焼した。
 ただちに初期消火を行い、EPゴム製造設備緊急停止をした。火災は拡大した。
 泡放射による消火および放水による隣接設備の冷却
19:40 火災を鎮圧した。
原因 1.フランジがゆるみ漏洩が発生した原因
 当該ポンプと吐出配管を共有するポンプを事故前に使用した時、想定外のキャビテーションに起因する振動が発生した。この振動により当該ポンプのフランジにゆるみが生じた。加えて配管壁面に生成する不溶性ポリマー塊がポンプを通過すると振動が生じることも振動の原因の一つになることも推定される。
 さらに、ポンプ吐出3インチフランジがレデューサーにより6インチ配管に接続されている。振動の力が配管にかかった場合、当該フランジ部でのゆるみを加速させる可能性がある。
2.着火の原因
 漏洩したヘキサン溶液は帯電性が高く、フランジからの噴出時に静電気が放電して、漏洩し気化したヘキサンに引火したと推定される。
対処 1.装置の緊急停止:原料遮断、回転機停止
2.当該区域: 泡消火剤による消火活動
3.周辺機器: 散水冷却
対策 1.ポンプ振動対策、点検
 当該ポンプは振動モニターの設置と吸入配管形状の変更を行う。吸入配管変更はキャビテーション防止である。全工場では吐出フランジと接続配管口径が大きく異なる箇所の形状変更、配管支持の適正化を行う。
2.地区の防災体制の充実
知識化 配管の振動は、漏洩事故につながることがある。ポンプ振動等には十分気を付ける必要がある。
背景 ポンプ振動によりフランジがゆるんだことが基本要因だが、なぜキャビテーションを起こしたか、フランジがゆるむほどの振動を放置したか、など理解に苦しむところがある。
データベース登録の
動機
ポンプ振動により配管からの漏洩、火災となった事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、機械現象、振動、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、損害額1.5億円(復旧費含む)
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例-平成12年(2001)、p.1348-1349
S化学C工場 EPゴム製造設備 第1系列における火災事故の件、S社ホームページ、(2000)
S化学C工場 S地区EPゴム製造設備第一系列未反応原料回収工程で生じた火災に関する報告書(2000)
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 プラントのうち150平方m焼損、配管、ケーブル等の損傷,溶剤燃焼量約30立方m.
被害金額 被災設備簿価約1,000万円、復旧費用約1億5,000万円(発災社)
マルチメディアファイル 図3.化学式
図4.化学式
図5.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)