失敗事例

事例名称 桟橋出荷設備における圧力計取付用枝管の腐食部からの重油の漏洩
代表図
事例発生日付 1993年07月07日
事例発生地 神奈川県 川崎市
事例発生場所 製油所
事例概要 1983年7月7日、製油所でタンカー向けに重油の積込みを開始したところ、圧力計の取付枝管の腐食部から重油が漏洩し、約2Lが海上に流出した。原因は、塗装時に下地処理が不十分で錆が残り、海水飛沫による腐食が進行した。
事象 製油所の海上出荷設備の配管から海上漏洩が起こった。重油をタンカーに向け配管先端圧力0.4MPaGで出荷を開始した。出荷開始から約1時間後に圧力計の取付用枝管の腐食部から重油が滴下しているのを発見した。約2Lが海上に流出した。図2参照
プロセス 製造
単位工程 移送
物質 C重油(fuel oil C)
事故の種類 漏洩、環境汚染
経過 1993年7月7日11:15~12:00 後に漏油が生ずる配管を使ってC重油200kLを異常なく出荷した。
13:10 タンカーへC重油280kLを出荷するため、0.4MPaGで移送を開始した。
14:25 240kLを積み込んだ時、タンカー乗組員が圧力計取付部付近の漏油を発見し、桟橋責任者に連絡した。緊急停止操作をしたところ、漏洩は停止した。
14:30 オイルフェンスの展張と吸着マットでの油の回収を開始した。
14:35 オイルフェンスを展張完了した。
15:35 吸着マット100枚を用いて油回収を終了した。
15:45 油処理剤の散布を開始した。
17:00 油処理剤の散布を終了し処置が完了した。
17:33 消防署に一般電話で連絡した。
原因 圧力計の取付用枝管は1973年の設置後交換されず、海水飛沫により外面腐食が進行していた。枝管の点検は塗装をはがして実施するが、点検後の再塗装時の錆落としなどの塗装前の下地処理が不十分であった。このため腐食が進行し、出荷時の圧力により錆瘤が剥離して開孔したと思われる。
対処 緊急停止。漏洩した油をオイルフェンスと吸着マットにより回収した。
対策 1.目視検査を強化する。
 疑いがある場合は全長について塗膜と錆を除去し、複数方向の肉厚を測定する。
2.異常発生時の通報の必要性について全従業員を再教育する。
3.桟橋の小口径配管を総点検し、429ヶ所中18ヶ所で同様の不良を発見し、交換した。
知識化 外面腐食は、ある特定部位に発生しやすい。それらの場所を理解すべきだろう。例えば、保温下などの水が入り込んだら抜けにくいところがそうであろう。塗装の下地処理の雑なところも同じだ。
背景 1.塗装工事管理または塗装工事仕様書が不十分であった。
2.発災時期の1993年は、すでに配管の外面腐食は話題になってからしばらく経っていた時期であろう。この時になって、海岸線の枝管の外面腐食が残っていたのはなぜであろう。情報収集に齟齬があり、保全計画が遅れていた可能性がある。
よもやま話 ☆ 腐食した配管類の保全修理作業は、腐食が予想外に内部まで進行することが多いため、手間を要する作業となりやすい。計画的で綿密な点検が肝要である。
データベース登録の
動機
海岸近くの小口径配管の外面腐食により起こった事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、作業監督不注意、計画・設計、計画不良、工事計画不良、使用、保守・修理、塗装下地処理不適切、破損、減肉、腐食、二次災害、損壊、漏洩、二次災害、環境破壊、海上汚染
情報源 高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1995)、p.262-263
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1993)
社会への影響 約2Lが海上に流出
マルチメディアファイル 図2.圧力計取付用枝管図表
分野 化学物質・プラント
データ作成者 板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)