失敗事例

事例名称 桟橋受入れ配管の保温下の腐食部から原油の海上への漏洩
代表図
事例発生日付 1990年10月11日
事例発生地 神奈川県 川崎市
事例発生場所 製油所
事例概要 1990年10月11日、製油所でA重油のタンク間の移送作業中、桟橋近くの配管から重油が漏洩し、海上に流出した。原因は保温材下の配管が塩害により腐食した。塩害は、環境条件によっては予想以上に進むことがあるので、綿密な点検と交換を計画的に実施する必要がある。
事象 製油所において、タンク間で重油をポンプで送油中、桟橋からタンクへの受入配管にも圧がかかり、受入配管の腐食部から重油が漏れ、桟橋付近の海上に約190Lが流出した。
プロセス 貯蔵(液体)
単位工程フロー 図3.単位工程フロー
物質 A重油(fuel oil A)
事故の種類 漏洩、環境汚染
経過 1990年10月11日06:00 定時巡回で異常はなかった。
09:25 タンクから別のタンクへポンプで重油の移送を開始した。この時漏洩配管も加圧状態になった。
09:45 桟橋付近にいた作業者が油臭を感じたので、周囲を調査したところ、海上に漏油を発見し、操油計器室に連絡した。
09:50 操油係員は直ちに送油ポンプを停止して関連バルブを閉止した。関連部署に連絡した。
10:10 オイルフェンスを展張し、吸着マットや油処理剤により、海上流出油の処理を開始した。漏洩箇所の調査を行った。
10:15 発見した漏洩箇所に鉄製バンドを巻き、オイルパンを設置してエアポンプにて油の回収を行った。
12:15 消防署に一般電話で連絡した。
15:00 漏油箇所付近のフランジに仕切板を挿入した。
17:40 鉄製バンドをはずして残油を回収した。再度装着し、漏れがないことを確認した。
原因 配管の保温材の防水処理が不十分なため、海水が侵入し、防食塗装がなされていなかった配管が腐食した。スケールが最大約10mm付着しており、これが内圧の上昇ではがれたとみられる。保温材を施工後30年が経過していた。図2参照
対処 オイルフェンス、吸着マット、油処理剤による処理。仕切板の挿入。消防署へ連絡。
対策 1.保温材を施した配管の点検方法と周期などについて見直しを行う。
2.消防機関への通報遅延を防止するため、通報体制の見直しと従業員の再教育を行う。
3.保温下配管でも錆止め塗装をすることが望ましい。
知識化 1.腐食は、目に見えない、気が付かないところに生じるものである。
2.反面、詳細に目を配りさえすれば、防止できるものでもある。
背景 1.情報収集の不足か、安全意識の不足による設備管理の不備と思われる。発災時点の1990年では既に外面腐食は石油精製、石化各社では問題になっていた。当該社は1980年の点検から10年放置している。そのためか、外面腐食が起こる条件が十分あるところに対して、十分な維持管理がなされていない。
2.外面腐食の起こりやすい条件は、海岸線に近い、保温下、塗装なし、保温の防水処理不完全、スチームトレース、地面と接触、常時湿潤などである。
よもやま話 ☆ 保温材下の配管は塗装をしないことが多いが、腐食を考えると最低でも下塗りは必要であろう。
保温材下に入った水分は非常に抜けにくいので、腐食を加速しやすい。
データベース登録の
動機
保温材下の配管の腐食例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、環境調査不足、海岸線、保温下、計画・設計、計画不良、点検計画不良、使用、保守・修理、塗装・保温工事杜撰、破損、減肉、腐食、二次災害、損壊、漏洩、二次災害、環境破壊、海上汚染
情報源 川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1990)
物的被害 重油約190L
社会への影響 桟橋付近の海上に漏油。
マルチメディアファイル 図2.腐食状況図
分野 化学物質・プラント
データ作成者 板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)