失敗事例

事例名称 反応器から洗浄塔への放出配管を工事中のジメチルアミンの逆流による火災
代表図
事例発生日付 1995年04月29日
事例発生地 神奈川県 川崎市
事例発生場所 化学工場
事例概要 1995年4月29日 神奈川県の化学工場で装置を停止して、ポリオキシエチレンノニルエーテルを合成する反応器で、緊急時の放出弁を手動弁から遠隔操作の自動弁に変更する火気使用工事を行っていた。放出先の洗浄塔にはジメチルアミンが残っており、本来行うべき仕切り板の挿入が行われていなかった。そのためジメチルアミンが逆流し可燃性混合気が形成され、不注意な火花発生工具の使用とあいまって事故を引き起こした。特に、安全規定に従っていない不注意な工事作業は問題であり、また配管等設備の把握不足(逆止弁があると思いこんだこと)はジメチルアミンガスの逆流見逃しの原因であった。
事象 ポリオキシエチレンノニルエーテルを合成する反応器(R-12)から洗浄塔への放出配管の既設手動バルブを自動バルブに切り替える工事を実施していた。新規に取り付けるバルブの長さに合わせて配管の一部を電動ノコで切断した後、切断面を電動サンダーで研磨していた。放出配管から炎が吹き出し、付近で作業していた2名が火傷した。
プロセス 製造
単位工程 設備保全
単位工程フロー 図3.単位工程フロー
物質 ジメチルアミン(dimethylamine)、図4
事故の種類 火災
経過 1995年4月29日09:00頃 火気(電動ノコギリと電動ザンダー)使用にあたり、可燃性ガス検知器による測定を行った。大気開放ライン接続フランジ部に仕切り板を挿入することになっていたが、工事業者(協力会社員)は怠った。
14:00頃 事故部分の手動バルブを取り外し、新しい自動バルブを取り付けるためバルブの一次側配管を電動ノコギリにより切断した。
14:36頃 切断面を仕上げるため電動ザンダーを使用し研磨したところ、配管下部開放口より「シュー」という音とともに炎が約1m噴出し、作業員2名が手に火傷を負った。
原因 1.可燃性ガス形成
 洗浄塔への放出バルブが開の状態だったため洗浄塔からジメチルアミンガスが逆流し、バルブ取り外し時までに反応器内に可燃性混合気が形成されていた。社内基準では、この工事はタンク内作業となり、タンク内ガス濃度の測定が必要だったが実施せず、可燃性混合気形成を見落とした。また、放出ラインには逆止弁がついていると思いこんでおり、逆流を想定しなかった。
2.着火原因
 その可燃性混合気が、電動サンダーの火花で引火した。フランジ部に仕切板を取り付けなかったため、火花のところまでガスが到達した。
対処 噴出した炎は一瞬にして消えたが、解放口より黒煙が出ていたため他の従業員が粉末消火器を使用して解放口より反応器内に粉末消火剤を噴出した。
対策 1.安全教育の徹底。特に工事施工前には、工事管理部門、設備管理部門、工事施工業者の3者により十分打合せを行う。
2.洗浄塔への放出配管に逆止弁を設置する。
3.火気使用工事などの重要作業の時は、記憶だけに頼らず図面や現場で確認をする習慣を付ける。
知識化 1.安全維持は一義的に運転会社、管理会社の責任である。それを実施した上で以下のことが言える。
2.工事業者への徹底した安全教育と安全管理を行うことが重要である。特に複雑なプラント内での工事では細心のチェックが必要である。また、協力会社社員への安全教育も重要である。
背景 1.装置を停止した状態では、状況が運転時とは変わっている。運転時にある方向に流れていたものが、停止時には圧力バランスが変わるので、逆流することも起こりうる。したがって、臨時に大気開放をして火気使用をするラインに仕切り板を挿入するのは安全確保の基本である。
2.また、火気使用工事をするような場合、記憶だけに頼らずP&IDやその他の図面、あるいは現場確認して安全の確保をするのが原則であろう。逆止弁があると思いこんで、確認作業をしなかった。全体を考えると安全管理に欠陥があったと推測される。
データベース登録の
動機
プラント改修工事中の事故例
シナリオ
主シナリオ 手順の不遵守、手順無視、仕切り板入れない、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、誤判断、誤認知、勘違い、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、2名負傷
情報源 川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1995)
負傷者数 2
物的被害 自動バルブ3基一部、計装用ケーブル焼損.
被害金額 約8万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料)
マルチメディアファイル 図2.配管図
図4.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)