失敗事例

事例名称 ローリー出荷設備のフィルターのドレン切り作業中のガソリンの火災
代表図
事例発生日付 1987年06月24日
事例発生地 大阪府 堺市
事例発生場所 製油所
事例概要 製油所のタンクローリー充填場でガソリンの出荷用フィルターのドレン切り作業中、誤ってガソリン500Lが漏えいして火災となった。ドレンの受けのペール缶を樹脂で覆った取っ手でドレン弁に吊して絶縁状態にした。通常以上の弁開度でドレン切りをしたため、静電気の火花放電で着火、拡大したとされた。漏えい量が大きくなったのは、ドレン弁近くで火災となったため近づけずにドレン弁の閉止ができなかったことによる。
事象 製油所のタンクローリー充填場で、ガソリン出荷配管フィルターのドレン切り作業中、誤って弁を開きすぎて、ノズル口よりガソリンがスカート状に拡がり流れた。その時にペール缶内で着火した。流出したガソリンがドレン弁近くでも燃えていたため、バルブを閉められず、ガソリン500Lが漏洩して火災が大きくなった。図2参照
プロセス 輸送
単位工程 移送
物質 ガソリン(gasoline)
事故の種類 漏洩、火災
経過 1. 毎週1回の出荷配管フィルターのドレン切り作業を2人で行った。
2. 1人がドレンを受けるべきペール缶の取っ手をドレン弁に引っかけて、ドレン作業を始めた。
3. 作業中にドレンの出が悪くなったので、一度ドレン弁を閉止した。
 その次に、ドレン弁を通常の1/4回転でなく1/2回転開けた。
 若干のミストを伴いながら、ガソリンがスカート状に流れ出た。
4. ガソリン流出とほぼ同時にペール缶で出火した。ペール缶を外に運び出した。
5. 流出しているガソリンを止めようとドレン弁を閉めようとしたが、流出したガソリンが燃えていたので、近づけなかった。
原因 1.ペール缶の取っ手はプラスチック製であり、これを介して吊り下げていたので、ペール缶は絶縁状態にあり、ドレン切りで生じた静電気が帯電していた可能性が大きい。
2.ドレン弁を1/2回転開けた時に、ミストを伴ったガソリン(多分水分も含む)がスカート状に流れ出た時に着火した。噴出したミストで多くの静電気が発生したと推測する。
3.静電気放電による着火と考える。
 なお、ドレン弁が詰まり加減だったことが、バルブ開度を上げたことや、ミストのスカート状の噴出に影響したのではないかと考えられるが、ドレン切りそのものが、同伴する微量水分の蓄積対策であり、配管材質が炭素鋼であろうことを考えると、ある程度はやむを得ないであろう。
対処 出火配管の緊急遮断弁を遠隔操作で閉にした。
対策 1.静電気による着火防止。受け皿の帯電防止のボンディング、アースの徹底等。
2.管理する側の安全意識、安全管理の徹底。
3.静電気に関する再教育を協力会社を含めて行う。
知識化 1.静電気帯電防止を徹底し、静電気管理の徹底を図るべきである。
2.静電気による着火はしばしば起こっており、その対策、例えば、接地などは、十分に行う必要がある。
背景 1.静電気に関する教育・訓練の不足とそれに起因する危険意識の不足が基本要因と推定する。プラスチック取っ手で吊せば絶縁状態は当然であり、水混じりガソリンを流せば静電気発生も当然であろう。
2.作業員2人とも協力会社員だった。運転会社員とは別に、独立して危険物作業を行う協力会社員は、運転会社作業員と同等の安全教育が必要であろう。協力会社に安全教育まで任せていた可能性がある。
データベース登録の
動機
ドレン切り作業に伴う静電気事故例
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、作業管理不良、不注意、理解不足、静電気の知識不十分、不良行為、規則違反、安全規則違反、定常動作、不注意動作、ペール缶をバルブに吊す、使用、運転・使用、サビの蓄積、不良現象、電気故障、絶縁、不良現象、機械現象、漏洩、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、負傷者3名
情報源 高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.97-100
負傷者数 3
物的被害 ガソリン,ペール缶
マルチメディアファイル 図2.漏えい箇所模式図
備考 静電気対策が必要な油種:
軽質ナフサ、ガソリン、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)、プラットフォーメート、重質ナフサ、灯油、軽油、A重油、及び類似の半製品など
分野 化学物質・プラント
データ作成者 古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)