失敗事例

事例名称 尿素合成塔の破裂
代表図
事例発生日付 1977年12月
事例発生地 コロンビア
機器 尿素プラント/合成塔/鉛ライニング付内筒(1m ID × 12m H)+80Kg/cm2級高張力鋼多層円筒(6.8t × 8)
事例概要 250TPD尿素合成塔(253Kg/cm2, 204℃)が、建設15年後のプラントスタートアップ時に破裂した。塔は3分割されて最大40mまで飛び、周辺設備を破壊すると共にプラント内の作業者に21名死亡、71名負傷の損害を与えた。
事象 プラント稼動開始(1963.5)から事故発生(1977.12)までの運転・保全記録調査、事故発生時の運転データ解析、破裂した塔からの試験片採取・検査などを行い、次のことが確認された。
当該合成塔はイニシャル・スタートアップ後1967.7まで使用された後、新合成塔に置換され、屋外に放置されていた。その後一時的に使用された期間(1969.5~1969.12)があったが、放置から10年経過後の1977.10に再使用開始となり、その3ケ月後に本事故が発生した。当該合成塔は、電力事情の悪さなどのため稼働時間36,900hr中に246回のスタートアップ/シャットダウンをするという異常な使われ方をしていた。
3分割された塔の中間部分は多層円筒の縦溶接線熱影響部で一直線に切れて平板化しており、破裂の過程は次の様に推定された:この中間部分で内圧によって縦方向の小亀裂がまず発生した後、これが徐々に大きくなっていき、その開口面積が臨界値に達したところで蒸気爆発が起って、塔は3分割になり飛散した。最初の小亀裂発生過程は、鉛ライニングに内在していた欠陥を通ってプロセス流体が漏出して内筒壁・多層円筒壁を腐食減肉させたため、内圧に耐えられなくなって発生したと推定された。この外に、塔壁内の応力集中部での低サイクル疲労割れ、外面からの応力腐食割れの可能性も検討されている。さらに塔材料不良、耐圧テストなどの健全性テストミス、運転操作ミス、爆発性ガスの発生など、破裂原因になりうる可能性があるものについて広範に亘る調査検討が行われているが、これらは全て否定された。
経過 尿素プラントにおいて、稼動開始から4.5年間使用した後一旦系外に出し屋外に10年間放置していた合成塔を再度系に組入れて使用したところ、内面の防食鉛ライニングに発生していた欠陥を通ってプロセス流体が漏出し、内筒・耐圧多層円筒を腐食減肉させた。このため内圧に耐えられなくなって亀裂が発生し、成長して3ヶ月後に蒸気爆発によって破裂した。多層円筒には6ヶのウイープホールが設けられていたが、これらは屋外放置中に外面から浸入した雨水などによる腐食によってできた酸化鉄で塞がれており、破裂までプロセス流体の漏洩を発見出来なかった。
原因 蒸気爆発, 腐食
対策 ウイープホールの増設とこれらからの漏出モニタリングシステム設置、塔内面の防食ライニング点検の強化、などを実施した。
なお、現在では尿素プロセスの改良・装置材料技術の進歩によって本件とは全く違ったプラントシステムになっているが、プロセス流体中のAmmonium Carbamateが炭素鋼、ステンレス鋼に対して激しい腐食性を持っていることや、小欠陥の見落としが合成塔の蒸気爆発に繋がる可能性があること、さらに破裂によって大量の毒性ガスが流出することに変わりはない。
知識化 本件では、プロセス流体が装置材料に対して激しい腐食性を持っていることや、大量の毒性物質を高温・高圧下で取扱っていることに対するプラントオーナー側の認識不足が問題視されよう。長年に亘ってプロセスの心臓部にあたる合成塔を屋外に放置するなど、工業国では考え難い処置がとられている。工業化途上国への技術移転に際して注意すべき問題点を指摘している、と考えられる。
よもやま話 工業国においても、合成塔耐圧壁が激しく腐食され事故寸前でプラントを停止して難を免れた例が報告されている。あと数日でプラントの定期点検のためにシャットダウンする、と言った時点で漏洩を発見した場合の対処がポイントであろう。
シナリオ
主シナリオ 不注意、理解不足、合成塔屋外放置のリスク認識不足、誤判断、誤った理解、合成塔鉛ライニングの健全性確認の重要性、ウイープホール機能確認の重要性、使用、保守・修理、合成塔鉛ライニングの点検・修理、ウイープホールの点検・修復、破損、減肉、プロセス流体による高張力鋼の腐食、破損、破壊・損傷、高張力鋼多層円筒の亀裂、破損、大規模破損、合成塔の蒸気爆発、尿素プラントの部分的倒壊、身体的被害、死亡、事故死、身体的被害、発病、アンモニア中毒
情報源 T.Jojima: Urea Reactor Failure, Ammonia Plant Safety, 21, 111(1979)
死者数 21
負傷者数 71
物的被害 尿素プラントの主要部に甚大な損害
分野 材料
データ作成者 篠原 孝順 (元東洋エンジニアリング(株))
小林 英男 (東京工業大学)