失敗事例

事例名称 安全措置の不備で、エレベータに衝突され作業者が死亡
代表図
事例発生日付 2002年02月13日
事例発生地 米国バージニア州ノーフォーク
事例発生場所 セメント製造工場建設現場
事例概要 建設現場でエレベータの通過経路で作業していた者に、下降してきたエレベータが衝突し、エレベータと床に取り付けられた鋼材に挟まれて死亡。エレベータはマニュアルで運転され、作業者が下にいることが確認されず、エレベータの使用禁止も行われていなかった。被害者もエレベータが降りてくることに気づかず、エレベータの下降を知らせるデバイスはなかった。
事象 セメント工場で新しい作業所を建設している際、大工として11年の経験をもつ作業者が予熱機タワーの3階の外側で作業中、エレベータが下降し、エレベータが衝突し、エレベータと床に取り付けられた鋼材との間に挟まれて死亡。
経過 事故当日も通常どおり被害者は午前7時から作業をはじめた。予熱機タワーの3階で作業をしていた。この建物の建設にあたって、地上レベルから順に鉄材を組み立てて行き、順に各レベルを増していった。そしてグラウトフォームを測り、ビームの外側に番号が記入されていった。これらの番号はコンクリートを流して床を取り付ける際に参照していた。被害者は安全用のハーネスを取り付けて、この番号を確認するためにビームの外側を歩行していた。エレベータの通過経路と建物の間にある予熱機タワーの方を向いて番号を確認するために屈んだ時、4階で作業員3名がエレベータに乗り込んだ。エレベータは建設中で、マニュアル運転のみが可能であった。エレベータの制御はエレベータの上部にあり、制御するものには、エレベータの下の様子が見えなかった。エレベータを操作した作業員は押しボタン式のハンドヘルドのコードを使ってエレベータを下降させた。エレベータが下降するとドシンという音がしたので、エレベータを止めたが、その後も約13cmほど下り、停止した。エレベータが被害者に衝突し、被害者はエレベータと予熱機タワーの床に取り付けられている鋼材の間に挟まれた。鋼材が切り取られ、被害者を救出し、地面に下ろし、救急車の到着までCPR(心肺蘇生術)を行ったが、被害者は死亡した。窒息死であった。
原因 エレベータを運転していた作業員が、エレベータの通過経路に作業者がいることに気づかなかった。エレベータの通過経路にいた作業員は、エレベータが降りてくることに気づかなかった。エレベータ付近で作業が行われている際に、エレベータを完全に使用禁止にしていなかった。そのような手順が設定されていなかった。エレベータの作動を知らせる警報やランプなどが取り付けられていなかった。作業者間のコミュニケーションが不足していた。
対処 エレベータが何かに衝突したことが判明した際、すぐにエレベータを止めた。挟まれている作業員を救出するために鋼材を切り、被害者を地上に降ろし、救急対応、CPRを行った。
対策 鉱山保安衛生庁に報告した。事故の調査が行われた。事故から3日間、エレベータの使用が禁止され、安全確認が行われた。定期検査を実施。エレベータが完成した後は、エレベータの通過経路には侵入できないようにした。
知識化 いかに慣れた仕事でも、安全手順の設定、実施は非常に重要である。移動目的地を目視確認せずに物を移動させると、何かに衝突したり、思わぬ事故を招く。通常物が無い場所にも、場合によっては物が置かれていたり、人がいる場合があるので、常に確認が必要である。また、仕事中には周囲の状況にも注意を向けることが重要である。
背景 2001年5月3日以降、定期検査が行われていなかった。この建設現場での勤務時間は一日10時間、週6日勤務であった。
後日談 鉱山保安衛生庁が調査をした結果が提出され、レポートがインターネット上で見られるようになっている。
よもやま話 被害者は11年の大工の経験があり、この現場では4週間と4日働いていた。労働監督署が決めた安全講習に準じた研修も受けていた。50歳であった。
データベース登録の
動機
一瞬の確認ミスが人命を失う事故につながることを、人々に再認識してもらいたいと思った。
シナリオ
主シナリオ 手順の不遵守、連絡不足、手順の不遵守、手順無視、手順書、不注意、注意・用心不足、保守時の不注意、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、身体的被害、死亡、未来への被害、予想可能な結果、社会の被害、人の意識変化
情報源 http://www.msha.gov/FATALS/2002/FTL02m08.HTM
http://www.msha.gov/FATALS/2002/FAB02m08.HTM
死者数 1
負傷者数 0
物的被害 なし。
被害金額 被害者の家族への損害賠償金(金額不明)
全経済損失 損害賠償に加え、事故調査の諸費用など。
社会への影響 同じ職場で働く仲間がこのような事故で死亡し、作業者に強い精神的衝撃を与えた。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)