失敗事例

事例名称 フランスの列車火災事故 死者12名
代表図
事例発生日付 2002年11月06日
事例発生地 フランス東部 ナンシー
事例発生場所 ナンシー駅付近
事例概要 パリ発ストラスブルグ経由ウィーン行きの夜行寝台列車が、フランス東部ナンシー付近を走行中に火災を起こし、寝台車に乗っていた12人が死亡、9人が近くの病院へ運ばれた。直接の原因はまだ調査の段階にあるが、電気系統からの出火、乗務員詰め所のガスコンロが原因との疑いもある。被害者はすべて寝台車内で発見されており、煙による窒息死と報告された。
事象 夜行寝台車がフランス東部 ナンシー駅を出発直後、火災を起こし緊急停車した。かけつけた地元消防署員が消火、救助活動をする中、男性6人、女性5人、子供1人の計12人の死亡、9人が病院に運ばれたことが確認された。事故直後は電気系統のショートによる出火が疑われていたが、その後の調査で乗務員詰め所に置いてあるガスコンロからの出火の疑いもでてきている。火災が起こったのは午前2時を少し過ぎた真夜中で亡くなった人たちは就寝中に窒息したもようだ。
経過 事故を起こした夜行寝台列車はパリ発ストラスブルグ経由ウィーン行き。乗客150人を乗せ、ドイツのミュンヘンに向けフランス東部のナンシー駅を出発したその直後午前2時15分ごろ、列車乗務員が3メートルちかくにもあがった炎を発見。列車は駅から約700メートル付近で緊急停車。地元の消防署員が消火にあたったが、寝台車から男性6人、女性5人、子供1人の計12人が遺体で発見された。いずれの被害者も立ちこめた煙による窒息死。その他、9人が重軽傷をおい、近くの病院に運ばれたが命に別状はないという。助かった人の中には逃げるために自ら車両のガラスを割った人もいた。どうやって逃げ出したか覚えていないと言う人もいる。それほど、人々はパニックに陥っていた。事故直後の地方当局の発表では、火災の原因は電気系統からの出火といわれていたが、現段階では乗務員以外立ち入り禁止の部屋にあるガスコンロから、そばにかけてあったジャケットに火がついたのではないかとの疑いもある。
原因 事故を起こした列車はA社製。1964年に製造され、1999年には大幅に手直しされ、2001年には分解修理もされたという。事故前の月曜日には定期点検も受けている。しかし、ヨーロッパにおける列車の規定では火災・煙報知器は義務付けられておらず、同車両にも報知器は装備されていなかった。その中で、乗客に対し禁煙もまた義務付けられてはいなかった。調査員はまた乗務員の対処の仕方にも注目。乗務員はいったん水をかけるなど消火活動にあたったが、その後車掌を探すため場を離れた。
対処 警察関係者が事故調査をするなか、心理学者たちはチームを組んで生存者たちのケアにあたった。事故後、ドイツ鉄道当局は専門家と2人の役員を調査のために現地ナンシーに派遣した。
対策 A社はこの事故により寝台車への火災報知器設置を考えると語った。
知識化 スピード、見た目のよさなどの前に当然あるべきものは何か、最悪の場合の対処の仕方等、徹底されたガイドラインが必要。
背景 スピード、安全性で世界一といわれながら、ヨーロッパでは火災、煙報知器装備の義務付けがなされていない。事故車両についても装備されていず、喫煙についても禁止されていなかった。
後日談 その後発表によれば、死亡者12人のうちアメリカ人5人、ドイツ人3人、ロシア人2人、ハンガリー人、ギリシャ人各1人。またけが人9人のうち、ドイツ人4人、イギリス人2人、アメリカ人1人、フランス人2人と報告された。
よもやま話 安全性、スピードの速さとその鉄道ネットワークで世界一を誇るヨーロッパ、特にフランスにおいてこのような惨事は極めてまれだといわれるが、1997年フランス南西部でガソリンを積んだトラックとの激突によって13人が死亡する惨事、1998年にはドイツで高速列車の脱線で101人が死亡するという事故が起きていることも事実である。
データベース登録の
動機
あまりにも限られた狭い場所での惨事で、寝台列車に限らず、公共の交通機関の防災体制を見つめなおすいいきっかけになってもらいたいと思ったから。
シナリオ
主シナリオ 不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、使用、運転・使用、不良現象、電気故障、回路、不良現象、化学現象、発火、引火、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
情報源 http://www.cnn.com/2002/WORLD/europe/11/06/france.train/index.html
http://www.macon.com/mld/tallahassee/news/world/4469151.htm
死者数 12
負傷者数 9
物的被害 寝台夜行列車両
分野 機械
データ作成者 ジュンコイノウエ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)