失敗事例

事例名称 貨物列車タンクカーの破裂事故
代表図
事例発生日付 1999年02月18日
事例発生地 アメリカ、インディアナ州クライマーズ近辺
事例発生場所 E社 R工場
事例概要 E社R工場での荷揚げ場で、貨物列車タンクカーUTLX643539に突然大規模な亀裂が発生し、火災、爆発が発生し、タンクカーのタンクを約230m飛ばしてしまった。このタンクカーには工場の炉の燃料に使用する約73500kgの可燃性の有毒廃棄物が保存されていた。調べによると、安全対策の作成、実施が行われていなかった。
事象 E社R工場の荷揚げ場で、貨物列車タンクカーUTLX643539に大規模な亀裂が発生し、爆発と火災発生。タンクカーのタンクを約230m飛ばしてしまった。タンク内の有毒廃棄物の他、大量のディーゼルオイル、ガソリン、HAB906溶液、トルエンが流出した。
経過 この廃棄物を運ぶ貨物列車は1999年2月12日にE社に到着。廃棄物の粘度を下げるために13日からスチーム加熱が始められた。その時の内部圧力は0psigで、その後タンクカーからポンプでくみ出そうとしたが、粘度が高すぎるため、スチーム加熱が繰り返し行われた。16日に圧力が45psigまで上昇したので、バルブを開いて減圧。3から5psigまで下がった際にバルブを再度閉じ、窒素を加えた。その夜、作業員が事務所で書類の記入をしている際、窓の外に火花を発見。その後も3回の爆発音があり、タンクカーが炎上し、火の粉が飛び散っていた。その周辺に作られていた溝が火災の広がりを防いだ。タンクカーのタンクは約230m飛ばされていた。
原因 タンクにはトルエン・ジイソシアン酸エステル物質の廃棄物が積まれていた。安全委員会の調査によると、E社がトルエン・ジイソシアン酸エステル物質をスチーム加熱する際、低圧スチームを使用し、スチーム加熱をしながら窒素を散布し、物質の温度を華氏140度以下に保っていれば、この事故は起こらなかった可能性が高いといわれている。E社がこれらの安全手順を行わなかったために、タンク内で自然反応が起こり、膨張し、タンク内に過度の圧力が生じたものと見られている。この物質の販売者と利用者間のコミュニケーションが不足していたことも、要因である。
対処 大量の有毒廃棄物が燃焼したため、周囲100件の住民が避難した。インディアナ州環境管理部門は、その後の製造を監視した。
対策 荷揚げ時の安全手順の作成および実施、貨物列車タンクカーの圧力緩和デバイス等の徹底した検査、用途変更の場合の準備、有毒廃棄物がからむ事故の報告などの重要性が指摘され、鉄道管理局や関連部門に安全性を呼びかけた。
知識化 安全手順の作成および実施を怠ることによって、大きな損害が生じる。取り扱う薬品物の性質は調べておく必要がある。
背景 取り扱う物質の性質を把握していれば、正しく安全な取り扱い方法や事故防止対策が立てられ、それを実施することにより事故は防止できたのではないかと思われる。
データベース登録の
動機
安全手順の作成および実施の重大さを伝えるため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、安全対策不足、手順の不遵守、連絡不足、手順書、組織運営不良、管理不良、発火、爆発、破断、手順
情報源 http://www.ntsb.gov/Publictn/2001/HZM0101.htm
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 タンクカーおよび周辺の建物
全経済損失 約820万ドル。これは物件の被害額およびこの事故による製造停止の損害を含む。
社会への影響 周囲の住民が一時避難しなければならなかった。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)