失敗事例

事例名称 コミュニケーション不足による火星探査機の炎上
代表図
事例発生日付 1999年09月23日
事例発生地 アメリカおよび火星
事例発生場所 火星に近づく探査機、コロラドのR社、パサディナのAミッションコントロール間の通信
事例概要 1999年9月、火星探査機マーズ・クライメート・オービターは、約6.6億kmを9ヶ月かけて飛行した後、火星の軌道インパクトで炎上した。コロラドのR社のエンジニアはデータをポンド単位で送信していた。しかしデータを受け取ったパサディナのAミッションコントロールでは、常にメートル法を使用していた。発射の際からこの状態であったにもかかわらず、誰も気づかず、最初はわずかな誤差が生じただけだったが、9ヶ月でエラーが蓄積し、失敗に終わった。
事象 1999年9月、火星探査機マーズ・クライメート・オービターは、約6.6億kmを9ヶ月かけて飛行した後、火星の軌道インパクトで炎上した。火星表面から約150キロの高度で接近するはずであったが、60キロ以内に接近してしまった。同機はまた、今年12月初めに火星への着陸が予定されている兄弟分の着陸機『マーズ・ポーラー・ランダー』の通信中継局という役目も負っていた。
経過 マーズ・クライメート・オービターは1998年12月、火星の地形、水の分布、気象パターンなどの記録を目的として打ち上げられた。1999年9月23日(アメリカ東部時間)火星を周回する予定であったが、通信が途絶えた。ディープ・スペース・ネットワークの直径70メーターのアンテナを使用して探したが、24日に捜索が打ち切られた。マーズ・クライメート・オービターは、予定では火星表面から約150キロの高度で接近するはずであったが、60キロ以内に接近し、致命的なダメージを受けた。
原因 コロラドのR社のエンジニアはデータをポンド単位で送信していた。しかしデータを受け取ったパサディナのAミッションコントロールでは、常にメートル法を使用していた。発射の際からこの状態で、9ヶ月の間にエラーが蓄積していた。この単純な失敗を検知できず、訂正できなかったことに問題がある。
対処 事故が生じたすぐ後に、特別捜査部隊が築かれ、問題の解析にあたった。
対策 兄弟分の着陸機マーズ・ポーラー・ランダーのプロジェクトに同様の問題が生じないように、新しい責任者を加え、計画を再検討し、ディープ・スペース・ネットワークがより頻繁に通信に利用できるよう改善するという対策をたてた。
知識化 小さなエラーも放っておくと命取りになる。また、エラーを起こしても、それをすぐに発見し、修正できるシステムの構築が重要である。
背景 最初は小さくはあったが、打ち上げの時からこのエラーは存在していたので、9ヶ月間の飛行中に見つけるべきであった。
後日談 1999年12月、マーズ・ポーラー・ランダーも通信を途絶え、このプロジェクトも失敗に終わった。
当事者ヒアリング 「こんな単純な間違いに気づかず、訂正できなかったことに重大な意味がある」とAの所長であるE氏博士は言う。
データベース登録の
動機
多くの有能な人材により行われた宇宙プロジェクトが、このような単純なエラーで大きな失敗に終り、誰にでもありそうな失敗が大きな問題になったということを人々に知らせるため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、無知、知識不足、過去情報不足、教育・訓練不足、価値観不良、安全意識不良、規範の違い、衝撃、破断
情報源 http://www.welchco.com/sd/08/00101/02/99/10/01/165724.HTM
http://mars.jpl.nasa.gov/msp98/news/mco991110.html
http://mars.jpl.nasa.gov/msp98/orbiter/
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 火星探査機一基
被害金額 探査機の損害1億2500万ドル、計画および管理費用等約1億ドル
備考 http://www.welchco.com/sd/08/00101/02/99/10/01/165724.HTMでは、火星探査機の名称が誤って記載されていた。
分野 機械
データ作成者 タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)