失敗事例

事例名称 化学工場の火災を伴う爆発で5人の従業員が死亡
代表図
事例発生日付 1995年04月21日
事例発生地 アメリカ、ニュージャージ州ロディ
事例発生場所 A製薬会社の化学工場
事例概要 ニュージャージ州ロディにあるA製薬会社の化学工場で火災を伴う大規模な爆発が発生し、5人の従業員が死亡した。事故当時、A社は混合作業を行っていて、水に反応する物質に水と熱が無造作に加えらた結果、物質の化学反応が起こり、爆発を誘発した。
事象 ニュージャージ州ロディに位置するA製薬会社の化学工場で火災を伴う大規模な爆発が発生し、5人の従業員が死亡した。工場はほぼ全焼し、隣接する建物が火災による被害を受けた。消火活動で使用された水が化学物質を含んで工場近辺の道路や川に流出し、住民約400人が避難した。
経過 爆発と火災が発生した当時、A社は水に反応する化学製品の混合作業を行っていて、通常1時間以内で完了されなければならない作業が、ほぼ24時間近く継続されていた。作業を行っていた従業員が、混合器の中で起こった化学反応、温度上昇、そして悪臭のあるガスが放たれたことに気づき、ようやく事態の危険性を把握する。混入された水が混合機の中のヒドロ亜硫酸ナトリウムを分解し、熱、亜硫酸ガス、そしていっそうの水を生み出した。いったん分解が始まると、分解は自己継続し、その熱でアルミニウム粉末が他の成分と反応、さらにより一層の熱を生み出した。そしていったん外に避難していた従業員が建物の中に戻り、化学反応を起こした混合物を沈静する緊急処置を施していた間に、物質が引火し爆発を引き起こした。
原因 事故の原因は、混合作業において、水に反応する物質(アルミニウム粉末とヒドロ亜硫酸ナトリウム)に水と熱が無造作に加えらたためとされる。また、この混合作業は、他社がA社に依頼したもので、依頼した会社とA社の間に十分な情報伝達がされていなかったことが指摘されている。
対処 化学反応を鎮める為、いったん外に避難した作業員が工場に入り、混合機の電源を切り、内容物を取り出したが、それが状況をいっそう悪化、または火災と爆発の可能性を引き起こした。
対策 安全衛生基準を見直す他、A社は労働安全衛生局(OSHA)から以下の警告を受けた。個々では危険物質として指定されていない物質でも、混合、配合における危険性を見極める。また、少量では反応しないもので、大量に使用されると反応する物質があることを認識する。
知識化 化学物質を取り扱う従業員全員が、その性質を十分認識していないと大事故につながる。
背景 予見可能性は不明。
データベース登録の
動機
当事故は、取り扱う化学物質の性質、及び取り扱いの情報不足により事態が悪化した例であり、今後の安全対策に役立てるため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、危険物取扱い対策、無知、知識不足、過去情報不足、教育・訓練不足、不良現象、化学現象、反応性物質、物質間反応、爆発、漏洩、汚染、発熱、機械的連鎖反応
情報源 http://www.epa.gov/ceppo/pubs/lodiintr.htm
http://www.osha.gov/media/oshnews/aug96/osha96-325.html
死者数 5
負傷者数 8
物的被害 工場全焼、隣接する建物の被害
全経済損失 $101,600 の罰金をA社がOSHAに支払った。
分野 機械
データ作成者 ユリエローディ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)